サンディエゴの夕暮れ時はとても美しい。

西の空がゆっくりとオレンジから青のグラデーションに染まり、ヤシの木がシルエットになって浮かぶ。

 

そんな夕暮れ時に、犬を連れて散歩に出るのが好きだ。

 

私の暮らすエリアは、とても庶民的なエリアで、いろんな人種が住んでいる。

ベトナム系、フィリピン系、メキシコ系の人たちは家族がとても仲良くて大家族な感じ。

ガレージに椅子やテーブルを並べて、よく宴会しているし、人の出入りがあって賑やかだ。

庭には果樹が必ずと言っていいほどある。

今はグアバがいい香りをさせているし、青いパパイヤの実もなっている。バナナも。

少し前までは、ザクロに洋梨。もう少ししたら柑橘系の果物が実をつけ始めるだろう。

 

夕暮れ時には、家々から夕飯の支度のいい匂いがしてくる。

ちゃんと、いろんなおかずを作られて、家族みんなでワイワイと食べるんだろうなあと思う。

 

何だか、スペインの田舎のことを思い出した。

おじいさん、おばあさんから子供達まで、家族が仲良く暮らしていて、近所付き合いもあって

大勢で食事をする文化。

動物たちがのびのびとしていて、野菜や果物も、そこらへんで採れる生活。

 

あかりのもれる玄関から、子供の声が、家族団欒の声がしてくる。

そんな当たり前のような幸せが、妙にノスタルジックで愛おしく思える夕方の散歩。

 

うちの周りは、家の値段が高騰して、新しく引っ越してくる人たちの層が変わってしまった。

昔は、子供たちが沢山いて一緒に育ち、近所同士がみんな知り合いだったところも、子供のいない共働きのカップルばかりになってしまい、私が越してきた頃の和気藹々とした雰囲気はなくなりつつある。

でも、その雰囲気の残っている通りもあるので、散歩に行くとホッとする。

近所のベトナム人の年配の男性デニーとは、会うとよく話をする。

彼はいつも散歩していて、近所の誰が亡くなったとか、どこの家がいくらで売れたとか、とても詳しい。

ベトナム戦争の話や、アメリカへ逃げてきた時の話などを聞いたこともある。

今日も、デニーと会って、少し一緒に歩いた。

 

何だか最近、友達や家族と一緒に年をとってゆく生活っていいなあと思うようになってきた。

サンディエゴに帰ってくると、ご近所さんとも、友達とも、医者や歯医者さん、ガーデナー、プラマーさんなどとも、再会して、ああ、もう長い付き合いになるなあと感じる。

 

スペインやポルトガルの田舎を旅していた時に、美しい自然があって、共同体があって、子供たちが大切にされ、お年寄りが敬われているような、大家族のような生活がいいなあと思った。

そして、サンディエゴにも、そんな生活があることを今回気づいたような気がする。

 

私は、どこでどんな生活がしたいのかなあと考えた夕方の散歩だった。