カミーノ29日目〜ウルトレイヤ!〜 | ケンブリッジ生活・サンディエゴ生活

ケンブリッジ生活・サンディエゴ生活

2019年からのイギリス・ケンブリッジ生活を機にブログを始めました。2023年春からは、アメリカのサンディエゴに暮らしています。

カミーノ29日目。Ocebreiro ~Triacastera

 

Ultreia! という言葉は二キルが教えてくれた。

旅の間、巡礼者同士は Buen Camino!(良い旅を) と声を掛け合う。

私も1日に何十回と言い、かけてもらった言葉だ。

でも、Ultreia! というのは、もっと昔からある巡礼者同士の挨拶だという。

Ultreiaはラテン語で前へ。とか先へ。という意味だ。英語に訳すとBeyondとなって

私には、今の自分を超えていけというふうに聞こえる。

 

Ultreia! (前へ)と声をかけられたら Et Suseia!(もっと高くへ)と返事をするらしい。

すごく勇気の出るいい言葉だと思った。

 

朝、出発したオセブレイロの山からは雲海が見下ろせた。

 

 

途中、振り返るとすぐ後ろにリーがいた。いつも後から出発するリーは私を見つけると忍者のようにやって来て驚かせるのを面白がっていた。

 

彼は最後の難関を越えたのでホッとしたのか、とても元気で陽気だった。

オペラを歌ったり、ウルトレイヤの歌を歌ったり、はちきれんばかりの明るさと元気さだった。

こうして、朝、すごく元気で歌ったり喋ったりして、疲れると歩くのが遅くなるところとか

食べ物に目を輝かせたり、ついついいつもふざけてしまうところはまるで子供のようなのだけれど、博識で観察眼が鋭く、知的なリーは一緒にいて楽しかった。

 

スマホで検索しながら、聞きたい曲とかある?と聞かれたので久石譲の曲がいいとリクエストした。ジブリ映画の曲は歩いている場所の景色に予想通りぴったりだった。

リーはスタジオジブリのアニメをよく知っていた。

子供の頃、魔女の宅急便のキキに恋していたらしい。

クレヨンしんちゃんも知っていて、チョコビって食べたことある?と聞いてきたりした。

 

 

この日は、午後1時に目的地のトリアカステラという村に辿り着いた。

評判がいいという宿に、リーと一緒にチェックインした。

 

 

その後、宿で荷物の整理整頓をしていると、村の真ん中のレストランで食事をしているリーから連絡がきたので、私もビールを付き合うことにした。

 

 

リーは、食事を注文したら、ワインが一本ついてきたと、ワインを持て余していた。

店の人に飲みきれないので持ち帰ってもいいかと聞いたら、持ち帰りはダメだという。

そこで、リーは持っていた空の水のボトルにそっとワインを移し替えていた。

 

メインストリートを外れると広いメドウが広がっていて、幾つもの浅い小川が緑の野原の上を流れていた。ポコポコ。サラサラ。と音をさせて、いろんなところで水が流れていて、鮮やかな新緑が綺麗で、水が光を反射させてキラキラ輝いていた。

 

 

 

太陽がポカポカとしていて、サンダルばきで時々浅い水の流れの中を歩くと、本当に気持ちがよくて足の痛みが癒やされてゆくのを感じた。

リーが、この歌知ってる?と言って、日本語で「大きなのっぽの古時計」を歌った。

なんとも、のどかな時間だった。

 

その後、リート別れた私は小さな食料品店に行って買い物をし、そして、もう一度1人でメドウに戻った。

あまりに素敵なところなので、ここにずーっと居たいと思った。水の流れる音に耳を澄ませ、太陽の光の暖かさを感じ、風景を眺めているだけで、幸福感に満たされた。

 

 

メドウの脇の道を歩いていると古い教会と墓地があった。

そして、そこを通り過ぎると、右側の少し先に橋が見えた。

橋へつながる道には、サラサラと水が流れていて、橋の上にも川とは別の浅い水が流れていた。川の上の橋に、川の流れとは直角に浅い水が流れているのが不思議だった。

 

教会の前で知り合いのイタリア人のリカルドと会ったので2人で探検に出かけるように、橋の向こうまで歩いていった。

水の流れる道や橋を渡り、橋の下を覗いたり、綺麗な青緑色のトカゲを見つけたりして秘密基地を共有している子供たちのような時間を過ごした。

 

↑この真ん中の草が生えている両脇を水がサラサラと流れている。

 

 

探検を終えた後は、またゆっくりと散歩をして宿に帰った。

 

 

夕飯は買ってきたインスタントラーメンにした。後はチーズやパン、生ハムをつまみにビールを飲んだ。メドウが眺められる、宿の裏手のテラスといういい場所を見つけた。

 

↑スペインのスーパーでよく見かけたインスタントラーメン。焼きそばバージョンもある。

 

 

そこにミーシャという若いドイツ人の男性がやってきて座ったので、話をした。

ミーシャはサンティアゴまで歩いて、そして出発地点まで歩いて戻るのだそうだ。

朝はいつも誰よりも早く起きて歩き始め、1日に40キロとか相当な距離を歩いていると言っていた。そんなストイックな旅をする人もいるんだなあと感心した。

その後リーが来て参加し、昼の残りのペットボトルのワインを私たちに分けてくれた。

 

近くのレストランからは喧騒ともいえるような話し声や笑い声が響いていた。

その村で唯一のレストランには、その日村にいる巡礼者たちのほとんどが集まっているようだった。

私は、田園風景を眺めながら静かに話をする落ち着いた時間がとても心地よかったので、レストランに行かないで良かったと思った。

 

みんな持ち帰れないワインのボトルを空けて、すっかり酔っ払ってるのかもなあと想像しながら

夜遅くまで賑やかなざわめきを聴きながら眠りについた。

 

この日の移動距離は20.7km。歩数は39,512歩だった。使ったお金は宿代を含めて30€だった。