カミーノ6日目。〜Los Arcos〜
ロスアルコスに着いて、アリスが教えてくれたアルベルゲに入っていくと、見たことのある人だらけだった。旅を始めて6日目。宿はいくつもあるのに、毎日同じ人たちと同じ宿で眠ることになる偶然を不思議に感じた。
韓国人のコニー、リー、トニー。セバスチャンを含むドイツ人の青年たち、初日から毎日会うイタリア人夫婦、酔っ払いのアイルランド人などとここでも一緒だった。
荷物を下ろして、自分のベッドをセットアップし(シーツと枕カバーを付けて、寝袋を広げる)
シャワーを浴びて、手洗いの洗濯をして干す。もう日課になったそんなことをする。
他の人は、ストレッチをしたり、ベッドに座って瞑想をしたり、外のベンチでおしゃべりをしたり、それぞれに時間を過ごしている。
私は、外へ散策に出ることにした。
街の教会の歴史のありそうな扉をくぐると、中は暗くて冷たかった。
天井までびっしりと装飾されていたロマネスク様式の教会。
金色。そして隙間なくびっしりと彫像や絵や装飾があり、圧倒される。
特に円形の天井がとても美しかった。
街は15分もあれば歩いて回れるほどの大きさだ。
教会の周りは、右も左も巡礼者ばかりで、見たことのある顔ばかりだった。
少し外れたところに、バス停があり、広場のようになっている庶民的な場所があった。
そこに地元の人がいるようなバルがあったので、ビールを飲んでリラックスすることにした。
ぼんやりとしていたら、アリスからメッセージがきてどこにいるのか聞かれたので、その場所を教えた。
しばらくするとアリスがフランス人の年配の女性を伴ってやってきた。
私たちは言葉が通じなかったので、ほとんどパントマイムで会話をした。
彼女は、スーツケースで旅をしていて、ほとんどバスで移動しているようだった。
カミーノは、もう何回も歩いているようだった。
ところで、アリスは誰とでも仲良くなり、いろんな人に好かれ、ほとんどの人がアリスを知っているようで至る所で、声をかけられていた。彼女の飾らない人柄が人をリラックスさせるのだと思う。それに、アリスはとても素敵な笑顔でいつも人に接していたから、みんなアリスといると笑顔になるのだった。
そのあと、3人でスーパーマーケットへ立ち寄った。
私は、バゲットとチーズ、ワインを買った。
買い物の後、私は街の入り口で見た山羊の赤ちゃんが、すごく可愛かったのでそれを見に行くと言って2人と別れた。
宿に戻ると、フランス人の女性はベッドでお菓子を食べながらくつろいでいて、アリスはレストランで夕ご飯を食べているというメッセージを送ってきた。
私は、アルベルゲの食堂でパンとチーズとワインの夕食をとることにした。
そこに、ほぼ毎日宿で顔を合わせるイタリア人夫婦が来たので、私はワインをすすめ、彼らはビールをくれて、いろんな話をした。
羊のチーズはクリーミーでいながらさっぱりしていて、バゲットにもワインにも良く合って美味しかった。
韓国人のおじさんグループが食堂にやってきた。酒のつまみになるような、生ハムやチョリソなどを用意し始めた。
チョリソをアルミホイルで包んで、電子レンジに入れたので大慌てで止めた。ちょうどバチッバチッと音が出始めたところだった。
そこで、韓国人のおじさんたちとも打ち解けて、チョリソをもらったりしながらワインを飲んだ。アリスも夕飯から戻ってきて、全然言葉が通じない私たちは、お酒を飲みながら仲良くなった。
不思議と、ここでは言葉が通じないことが、不便ではあるけれど、一緒に楽しい時間を過ごすことの妨げにならないのだった。
韓国人のコニーやセバスチャンのグループは外でギターを弾いたり、歌を歌ったりして盛り上がっていた。おいでよと誘ってくれたのだけれど、もう疲れていたので、残りのワインとチーズを良かったら片づけてと渡して部屋に帰った。この夜もなかなか暗くならない外の明かりと人々の笑い声や歌声を聴きながら眠りに落ちた。