クリスマスカードを送る準備をするついでに、アメリカと日本の家族に私が暮らすケンブリッジの風景をまとめたカレンダーを送ることにした。

そして、その写真の注釈をページの裏につけることにした。

 

ガイドブックなどをもとに写真の注釈をつけてゆく。

例えば、1月の写真はラウンドチャーチなのだけれど、それがイギリスに現存する4つのラウンドチャーチの一つだということや、900年近い歴史があるということなどをタイプしてゆく。

ほんの数行の説明。

 

7月の写真に、私はグランチェスターメドウの写真を選んだ。

 

グランチェスターメドウをどういう説明をしようかなと、調べていて、1969年のピンクフロイドの曲「グランチェスターメドウ」の歌詞を読み始めた。

日本の家族に、グランチェスターメドウの雰囲気を伝えたいなと思って、歌詞を和訳しようと思ったのだ。

 

グランチェスターメドウは、息子の友達が、夏になると家族と訪れて水遊びをする場所だと言った。

スペイン語のクラスのクラスメートの女性は、ケンブリッジで一番好きな場所に、グランチェスターメドウを選んでスペイン語で発表した。

 

歌詞の一部を私なりに訳したものは、こんな感じになった。

 

穏やかな水の流れるメドウ。

光溢れる金色の大地に横たわり、太陽を浴びる。

過ぎゆく午後。

過去の音が、都会のこの部屋に訪れる。

ヒバリの鳴き声。地に吸い込まれる狐の吠える声。

カワセミと水飛沫。

木々の下で緑色をした水が、笑い声のような声を立てて流れる。

あの永遠の夏の日の思い出。

 

グランチェスターは、ケンブリッジの街の南に位置していて、夏になると大学生や地元の人は自転車や小舟でグランチェスターを訪れる。ピクニックをしたり、水遊びをしたり、有名なカフェ、オーチャードでアフタヌーンティーを楽しんだりする。

 

そんな、夏の眩しい思い出が蘇るような歌詞に、少しだけ切ない気持ちになった。

 

他にも、街の小径やメドウの野の花の写真などに説明を添えていると、自分が、それらの場所をとても親しく愛おしく感じていることに気づいた。

 

そんな作業を午後の居間でしていた。

外は雨降りで風が強く、午後3時を過ぎたら、あっという間に暗くなる。

朝、太陽が出るのも遅い。

6時半くらいなると、まだ外は暗いけれど、ボートの練習の音が川から聞こえ始める。

朝焼けが始まるのは7時半過ぎ

 

居間から見る、朝焼け。

この川を8人乗りのボートがオールの音と共に、通り過ぎてゆく。

漕ぎ手の白い息。ニット帽。並走するコーチの自転車。

 

そんな風景が、いつか、とても懐かしいものになるのだろうか。

カレンダーを送る準備をしながら、自分の受け取る時間を大切にして思う存分、それをエンジョイして過ごそう!と強く思った。