ベランダから下を見下ろすと、目の前には川がある。
川というのは、こんなにも、賑やかなものなのかというくらい、いろんなものが、この川を通り過ぎる。
朝、早くから静かな水音が聞こえてくるのは、ロウイングという細くて長い、手漕ぎのスポーツボート。ドッドッドッ、、、という音が聞こえてきたら、それは住居用のナロウボート。その他にも、カヌーに、カヤック、ゴムボート、パドルボード、いろんなものが行き交う。午後、ビールを飲みながら、まったりと流されていくゴムボートのカップル。ターザンさながらのムキムキの半裸で、雄叫びをあげながら膝をついた姿勢でパドルボートを漕ぐ人。自由である、、、。
釣りをする人、ボールをとりに飛び込む犬、白鳥や鴨たち。岸辺にブランケットを敷いてピクニックする人々。
とにかく、川を眺めているだけで退屈しない。
私が一番好きなのは、ナロウボートだ。
今は夏なので、家族や友達が屋根の上に座ったり、犬が行ったり来たりしたり、子供が窓から頬杖をついて外を眺めていたりしているのが、目の下を悠々と通り過ぎていく。
そして、なぜか、ナロウボートには、大抵沢山の鉢植えが載っていて、なんだか、ノアの方舟を思い起こさせる。
季節の花を沢山飾っていることもあれば、ハーブのコンテナやトマトやきゅうりの鉢が何個もあるのも、よく見かける。
あとは、葡萄の蔓が伸びているのもみたことがある。
家族も、犬も猫も乗せて、植物も載せて、水上を移動し、生活する人たち。
普段は、このように岸に係留していて、多分、汚水を処理したり、生活用水を得るために
船を動かす。そんな場所への行き帰りに、うちの下を通るらしい。
ナロウボートは、色やデザインが可愛いものが多く、船には名前もついているので、個々のボートを覚えて、通り過ぎるのを見るのを楽しみにしている。
冬は寒そうだけれど、夏は溢れるような鮮やかな花が生活の楽しさを語っているよう。
他のヨーロッパの国のことはよくわからないけれど、英国のハウスボートは、優しい風景と川の景色に溶け込んでいて、美しい文化だと思う。