
頭髪の無い中島さんは、優しいおじさんだった。
昼間は、仕事に行って、いつも同じ夕刻時、戻って来た。
お母ちゃんの介護は私ができるので、
中島さんが、私たちの一間だけのアパートに泊まる理由がない。
と、私は思った。彼が、うとましかった。嫌いだった。
そうこうして、数日経った頃だろうか、数週間後だったのだろうか、
昼間突然中島さんの妻が現れた。怒鳴り声がアパート中に響いた。
「こんなとこで、何しているのよ。こんな女に取り憑かれて。」
メガネをかけたチリチリパーマの妻さんは、彼の頭を手提げバック
で叩いた。中島さんは、彼女の腕をつかみ、
「とにかく外へでよう。」と、彼女を部屋から引きづり出した。
その日、二人は、戻ってこなかった。
その後、私は、中島さんに会う事はなかった。
お母ちゃんと私は、ただただ怖くて、動く事ができずに、
二人が出て行った後も、そのままぼーっとしていた。