8歳。
東京オリンピックの年、
父親が死んだ。
母と私は故郷を離れた。
母は東京で働く事に。
私は知人宅で暮らす事に。

家族は母一人だったが、
彼女と二人きりで暮らした月日は
そんなに長くない。

前述の知人宅で私は、
「悪い事」をする子で
手に負えない。と思われた。

同居して半年ほどした頃、
母親のもとに私は届けられた。
母はホテルに住み込みで働いていた。
子連れの寮はないと、
ホテルを退職させられた。

母と私は、桐生市へ向かった。
初めて乗る汽車ぽっぽだった。
トンネルに入る前、
乗客は一斉に窓をおろす。
トンネル内を通過。
あの暗闇、丸びをおびた
天井の薄暗い電灯が
記憶のなかに今だ
灯っている。
(続く)