
3月ヒデキは上京した。
地元での就職が決まっているのに、
大学卒業が危なかったからだ。
追試を受けたのか、教授に泣きついたのか、
よく思い出せない。
私のほうは狂喜乱舞。
今後長い間会えないと思っていたからだ。
彼は私のアパートに泊まった。
1泊、2泊?
ああ、それすらも思い出せない。
ただひとつ鮮明な記憶。
ベッドの中でうまく行かなかった。
ことだ。
私は傷ついた。悲しかった。
彼にはその気がなかった。
私への優しさから断りきれず
に、・・・・
「会社には、退職願いだしたよ。」
「夏のボーナスが出た後、
宮崎に移る予定にしたから。」
彼の反応。困っただろうな。
彼は、私と結婚するなんて、
私に求婚さえ、していないのだから。
まして、宮崎に住まない?なんて、
言われていないのに。
「会社辞める前、5月の連休に、
宮崎に行こうと思ってるんだけど。」
「美しい所だから、きっと好きになるよ。」
「だけど、その時は、仕事も
はじまってるから、一緒にいられるか、
どうか、わからないよ。」
朝一緒にアパートを出た。
私は仕事へ、彼は羽田空港に
向かった。
1979年春
1ヶ月もすれば彼に会える。
だから、この別れ、私には、
それほど寂しいものではなかった。