
夢をみているんだ。
きっとこれは夢なんだ。
そうに違いない。
私は眠っているんだ。
だから、今、この目を開けると、
そこは、昔の家で、
お母ちゃんもお父ちゃんもいるんだ。
お父ちゃんも本当は死んでなんか
いなかった。
幾度も幾度も、思った。
幾度も幾度もそう願った。
この寂しさ、悲しさ、惨めさ、
すべて夢の中のできごとなんだと。
でも目を開けると、そこには、
誰もいない暗い部屋。
私だけ。8歳の私だけ。
薄明かりに照らされた
6畳間に独りぼっちの私だけ。
小学校の低学年。
私は家を建てた。
心の中に。
でも私以外の家族は住んでいない。
想像した大きな家の中で楽しんだ。
2階建ての大きな家には大きな庭があり
周囲を高い塀で囲まれていた。
庭には、様々な花が咲き、木々がしげり、
白いテーブルや椅子があった。
私だけの部屋あり、ベッドも机も、
ピアノまであった。
私は時を忘れてその想像に没頭した。
1年くらい続いただろうか。
現実逃避だった?
やがて現実が容赦なく繰り返し襲ってくる。
逃げられない、現実。
それをさとった時、その楽しい大きな家は
私の中から消えた。