■明日を生きる
すべての命あるものは、生まれた瞬間からすでに、その寿命が決まっていると聞いたことがある。
この世での役目を十分に果たして、天国に召されるのだろうか。
それが、たとえ数ヶ月でも1年でも・・・・
それが、その子に与えられた時間なのだろうか。
どこかで遺棄されてセンターに収容された子たち。
飼主にセンターへ処分持込された子たち。
迷子になってしまってセンターに収容された子たち。
どこにたどり着くこともなく、人知れず、命が消えてしまった子たち。
無事に飼主と喜びの再会を果たす子もあれば、
誰も迎えにきてくれず、ガス室で最期を迎える子もある。
私たちのような引取団体や個人に引取られて、第二の犬生・猫生を歩む子もいる。
処分される数からすれば、ほんの一握りの子たち。
この子たちの命が繋がったのは、繋がらなかった子たちを代表して、私たちに何かを伝えるためだったのか。
では、命が繋がらなかった子たちは、それが持って生まれた運命の寿命なのだろうか。
犬猫は飼主を選べない。
この世に生を受けて、どこで生きることになるかは、自分で決めることは出来ない。
誰に貰われるのか、誰に飼われるのか(買われるのか)。
それだけに、私たち人間は、命を預かる責任をもっと真摯に受け止めなければいけないといつも思う。
Mダックス♂ハービーがセンターに処分持込されたのは、確か昨年の2月16日だったと思う。
噛むので手に負えないというのが、処分の理由。
ゲージに入れたままで連れて来られたそうで、首輪もしていなかった。
年齢は3歳と聞いた。
センターの収容ゲージに人が近づくだけで、襲い掛からんばかりの唸りよう。
この時期、引取犬が少なかったこともあり、まだ3歳なら、何とかなるのでは・・・と思い、引き取りを決めた。
昨年の2月17日のことだった。
この時点で、ハービーの3歳という寿命は、少し延びた。
今までどういう暮らしをしてきたのか、わからない。
前の飼主さんが、ハービーのために努力してきたのかどうかわからない。
ただ、一緒に暮らして思ったのは、穏やかに暮らしていれば、彼も穏やかだということ。
苦手なこと、怖いことはあるけれど、決して、手に負えないようなガウガウ犬ではないこと。
おとぼけで甘えん坊の可愛い一面も持ち合わせ、
他の犬とも、よほど相性が悪くない限り、それなりに上手に付き合える。
ただ、ダックスという強靭な顎を持った犬種なので、噛まれたときはダメージが大きいが・・・・。
それも、犬歯カットをすることによって、ずいぶんと緩和された。
さぁ、これからだよ。ハービー。
もうすぐセンターから引き取って1年になる。
健康な子なら15年の寿命があるとして、まだハービーは、その3分の1も生きていない。
病院で2ヶ月近く預かってもらっていた時も、15年の中の2ヶ月だから、我慢してね、きっとこれから、もっともっと楽しいことがあるからと、ハービーに語りかけていた。
こんな結果が出なければ、今もそう思って、ハービーと暮らしていただろう。
・・・・そう思っていたのに、ハービーの寿命は、グンと縮められてしまった。
リンパ腫
まさかハービーが悪性のリンパ腫になるなんて、想像もしていなかった。
このままご縁が見つからなかったとしても、我が家でそれなりに暮らしてくれればいいとも思っていた。
このままだと余命3ヶ月もたないだろうと言われた。
涙がボロボロとこぼれた。
先週末に下顎の横あたりが、少し膨らんでいるようで気になった。
同時に、なんか元気がないな、大人しくなったなと思った。
ミニピン♀あこちゃんが我が家に来たので、 そのせいもあるかも知れないと様子を見ていた。
今週に入ってから、下顎の横あたりの膨らみが、大きくなってきたように思えた。
とにかく気になって、病院で診ていただいた。
カラーをつけ、膨らんでいる箇所に繋がるリンパ節から、注射器で細胞を抜き取って検査していただいた。
結果、若いリンパ芽球が90%以上を占め、間違いなく、リンパ腫でしょうとの診断を受けた。
四肢の脇のリンパ節も腫れてきていた。
これから、どうしよう・・・・
抗がん剤を使った治療をしなければ、余命わずか・・・・。
抗がん剤を使ったとしても、余命1年ほど。
稀に2~3年生きる子もあるそうだが、頑張っても、あと1年と考えなければいけない。
抗がん剤は辛いんだろうか。
治療することへのストレスがあるんじゃないだろうか。
リスクもゼロではないだろう。
でも、何も積極的な治療(この場合、延命行為になるのだろうが)せずに、このままサヨナラでは、辛い。
リンパ腫のことを調べていて、以下のような言葉に出会った。
『通院や治療のコスト、副作用のコントロールを克服する努力をした上でも、その程度の延命なのか?と考えられる方もたくさんいらっしゃるとは思います。治療に対する考え方、生死に対する考え方が様々であることには獣医師としても異論はありません。ただ、いくつか助言できることがあるとすれば、無治療での余命6週間の間というのは、徐々に症状が悪化していく6週間です。しかし、治療をした上での数ヶ月(もしくは1年越)では、通常の生活が営める時間です。治療により寛解に達したペットは、以前の通りに食事をし、散歩をし、元気に生活することができます。多分、傍から見たら抗がん治療を受けているとは誰も思わない、ふとすると飼主の方本人すら「もしや、完治しているのでは・・・?」と考えたくなるほどのQOLの改善を得られる期間です。そして、もし1年、ペットが良好なQOLで生活することができたとしたら?リンパ腫が好発する中年期でのイヌにとっての1年は、ヒトで言えば5年の歳月に相当します。ヒトの時間よりもイヌの時間の流れの方が早いのです。彼らにとっては非常に有意義な時間となるかも知れません。』
この言葉を読んで、抗がん治療を受けることを決めた。
もし、抗がん治療を受けても、どこまで反応して良くなるのかわからない。
でも、もしも、あと1年生きることが出来たとすれば、まだ若いハービーにとっては、人間の4~5年間くらいの時間を生きることが出来る。
それが幸せなのかどうなのか、それはわからない。
でも、ただただ、今は、死んで欲しくない気持ちである。
ハービーのことを思うと、今は辛く悲しい思いでいっぱいである。
里親さんが見つからず死へと旅立つことが辛いのではなく、ここで、近い将来、ハービーの命が閉ざされてしまうことの辛さである。
ずっと保護犬のままであっても、命があれば、いつか明るい光が見えてくる時期がくるかも知れない。
生きられないことへの辛さ、悲しさ・・・。
でも、ハービーとともに頑張っていかなければ・・・・。
病院の待合室で細胞検査の結果を待つハービー
長い不安な時間が流れていた。
明日を生きるために、今日を生きる。
そう決めたからには、前に進んでいこう。
今週末から開始する予定の抗がん剤治療には、継続して相当の費用がかかります。
皆様にチャリティ基金を通して、ご支援のお願いをすることになるかと思いますが、どうか応援、よろしくお願いします。