今、市場から戻ったところ。
夜のみの営業なので朝はゆっくりできる。
とりあえずエスプレッソを一杯。

今日は時シラズ、毛蟹、雲丹、あさり。
三河や三重のあさりは今の時期ほんとに美味しい。
身がはち切れんばかりに詰まっている。
買うのはいつも特大の三重のあさり。

市場に行くといろんなパワーが渦まいていて元気になる。
真剣な眼差し、笑い声、怒鳴り声...

海外で暮らし、日本に戻ると、人の感情表現の幅が狭いと感じることがある。
一番は「ありがとう」の一言の少なさ。
多分、皆言わなくても分かるって思ってるのだと思う。

カナダで暮らしていたときの"Thanks!!" イタリアの" Grazie!!" イギリスの " Cheers!!"
みな、当たり前だけど "ありがとう" を表現する。何か身体が温まる。
エネルギーのキャッチボール。

そんな場所には決まって " 怒 " がある。
溜めずに表現する。ぶつけられる、痛い。ぶつけ返す、相手も痛い。
体中のエネルギーが瞬時に爆発し、静まる。
コントロールできる範囲で怒りを表現することは大事だと思う。
気分が悪いのに薄ら笑いを浮かべられるより、こっちの方がいい。

昔、大阪の市場で働いていた。
卸売市場でなく、大阪日本橋にある黒門市場。
冬も最中の1月中旬から働き始めた市場の朝は冷たかった。
早朝、明石や和歌山、九州、北海道から続々届く魚を種分けして、ミナミ(難波周辺)にある取引先の料理店からの注文の魚を用意する。
一番は鯖から。
充分寒いのに氷水に浸かっている鯖を取り出し、頭と内臓をとり、三枚におろす。その数50は下らない。
手の感覚が何分もしない内に麻痺してくる。時間との戦い。
要領をえないうちは、遅い。手がかじかむ。水に濡れた手が乾燥し、何日か後には、ひび割れる。
最後に塩で〆ルのだが、ひび割れた手にこの塩は辛い。泣けてくる。

平目を絞めるとき、手を噛まれた。平目に手を噛まれたのは恐らく日本中探してもそうはいない。
口は小さいが鋭い歯を持っている。経験したことのない痛みに、声もでなかった。

でも、市場の人間は温かい。皆揃って口は悪いが、人間味がある。
「おぉ、お前下手くそやなぁ」「こいつがおろすんやったら、下身(骨付きの身の方)にしてくれよぉ」
なんて言いながら、そっとコツを教えてくれたりする。

あの時、飲んだ一杯の缶コーヒーは、今飲んでいるエスプレッソの味を上回る。
味というより、身体に染みた。

そんな市場の自分の店の前に、洋服店があった。
ある時、血相を変えて店の従業員の女性が走って来た。

「~さん、おたくのタコが~!!!」

網ネットからまんまと脱走したタコが道を渡り、洋服店で品定め!?
こんなに似つかわしくない光景もない。
笑いをこらえ、丁寧に謝り、

(おい、墨は吹くなよ、頼むから....)

と心の中で語りかけ、店を出た。

何ヶ月か後、朝の仕事も区切りがついてほっと一息していた時、
増えてきた市場を行き交う一般の人達の後ろを悠然と進む赤い物体。

威風堂々ムック

また、うちのタコだ!!

やっぱり市場っていい。

では、今日も張り切って行きましょう(*゚.゚)ゞ

Grazie per la sua visita oggi! Ciao , Buongiorno!!!