記憶と願いと
バスの中で揺られ、意識が沈みかけながらも、
思い出していたのは、病院の匂い。
小学生の高学年のころから、入退院を繰り返していた母方の祖父。
面会時間が確か夜の7時とか8時だった気がする。
果物とかヨーグルトを私に渡す皺くちゃの祖父の手や、
消毒液の匂いと、老人独特の匂いが混じる院内。
忘れていた。
ふと思い出してしまったら、喉の奥が熱くなった。
今回帰省するのは、目的がたくさんあるわけだけど
一番の目的は祖父に会うこと。
実家にいる父方の祖父が、今週、入院したという知らせを受けて。
あんなに元気だったから、動揺する。
検査入院だってことらしいけど、やっぱり動揺する。
山形帰ってきて家に帰る前にお見舞いに行ったけど
目に見えて弱っている祖父を目前に泣きそうになった。
まだ、泣いてはいけない。
ただ、点滴が落ちるのを眺めながら、
コウコウとマスクの中で息をする祖父を横目に。
危ない、とかそういうことではないみたいだけど。
とてつもなく弱々しい祖父はまだ信じがたいのに、
ベッドの横にある老人用おむつは妙に現実味を帯びていた。
母方の祖父が亡くなった時に強く思ったのは、
私が結婚するまで、ママになるまで、
父方の祖父母、母方の祖母ともに元気でいてほしいということだった。
今、さらに、強く思う。
元気なうちに早く結婚したいとそればかり焦るのは、
やっぱり間違ってるのかな。
思い出すだけで、喉に熱さが戻ってくる。

