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Day Dream Traveler

 日々の出力を義務付けるための一手段。 もしくは、赤い幻想と青い現実のあいだを夢見がちに歩いて行く旅行者の記録。

流されてしまった。

透明骨格標本のイメージが頭から離れない、

あれは本当に美しかった。なんとなくクラフトエヴィング商会を

彷彿とさせるけれど、雲を掴むような話ではなさそうだ。


複雑な、手に終えない何かをイメージしていて

たどり着きたる、人間パズル、その互換、昨今のイメージに流されて、

複雑な、手に終えない何かと対じする人間、

思考が停止する人間を書くことが出来なかった。


あげく、落ちはないのに落ちを探す始末。

消せないのは辛い、アップしなければいいのだけれど、

人目にさらして、なんぼ、が、表現。

それもあり、これもあり、主人公も人間パズルでいいんじゃない?


なぜ落ちを探すのか、気持ち悪いから、

筋が通り、何者かわからないものが、何なのかが見えてこないと、

気持ちが悪い、わからないものをわからないままに、

ほって置けないので、どうしてもわからないものには、

カテゴライズしてラベルを貼る。自分を守る

ためにみんなやってることじゃないか。


不条理ってむずかしい。自分が気持ち悪いことに僕は耐えられない。

意味がなくても、意味を探し見つけ出したくなる。


流されるのと、自ら流れるのは違う。

今日は流れてみた。これはこれでよし。





人間パズルを買った。

60兆個の細胞から出来ていた。

神経の繊細さ、骨格の重厚さ、筋繊維の機能性、

無駄のないことに驚いた。美しさに圧倒された。

説明書の製作手順に従って半年、

ようやく右手を完成させた。

ピンクに輝く楕円の爪、すらりと長い指、ふっくらと

丸みを帯びた親指の付け根

それはどうやら、女の手だった。

ワイングラスに右手を飾って、

レースの手袋を着させたり、

マニキュアをつけたり、

指輪を買ってあげたりした。

右手だけで色々遊んでいるうちに、

それなりに満足してしまったので、

続きを作るのをやめてしまった。


この前の誕生日にワインを飲もうと

グラスを戸棚から出したら

いつの間にか右手が消えていた。


押入れの中、

埃まみれのパズルの箱は空っぽだった。

そういえば、洋服が2、3着消えていた。


あの右手は、押入れにもぐりこんで

一人で自分を完成させたのだろうか。


いなくなってみて、僕は彼女の右手しか

知らないことを後悔した。


右手に記憶があるのなら、彼女は僕を覚えているだろうか?

好き勝手に弄んだ事をゆるしてくれるだろうか?

最後まで作り上げられなかった事を恨んでいないだろうか?


パズルの箱のそこから、

綺麗な文字で書かれたメモが出てきた。


「あなたの細胞も毎日15兆個死んでいます。

 背筋の細胞がはがれて背骨がゆがんでいたのが

 見えたので、ちょっときになったから、寝ている間に

 直しておきました、もっと自分の細胞を大切にしてください。

 今までありがとうございました、さようなら。」


僕は完成した時、置手紙なんかしなかったし、

ましてや相手の身体を心配することなんてなかった。


優しい、いい子だったんだなと思うと、

ますます彼女のことが好きになっていた。


女の右手を見るたびに、

僕は顔も知らない彼女を思い出す。

小さな明り取りの窓があるエレベーターフロアーで、

5月でもないのに一匹の蝿がうるさく飛び回っていた。

小さい豆ほどある体をのろのろと動かしながら、

ブンブンと不快な音を立てている。

壁にぶつかる、窓にぶつかる、僕に向かって飛んでくる。

叩き潰してやりたかったが、その後の後始末を考えると、

両手がぴたっと動きを止めた。

チーンという小気味の良い音とともに、

目の前の扉が開くと、慌てて中に乗り込んで、

閉まるのボタンを連打する。


数日後、蝿は死んでいた。

開くことのない窓の前で、

空を見つめて死んでいた。


壁にぶつかる必死さが思い出された。

苦しむよりも安楽な死を望んだだろうかと危惧した。

別の道を開く一条の希望を潰したことを後悔した。


考えるのをやめた。

蝿の死を悲しむなんてばかげている。

くだらない感傷は何も生まない。


決められた舞台の中で必死に動き回る姿は

見事なコメディーだった。

世の中には見えない壁という物がある事を

身を持って教えてくれた。

死してなお、窓際で空を見つめる姿は

生へ執着することの素晴らしさをおしえてくれた。


チーンという小気味の良い音とともに

目の前のとびらが開く。

蝿の死体にかまけるような馬鹿じゃない。

もうこいつのことは僕の頭の中からきえはしないから。

僕はエレベーターに乗り込んだ。


私の一日は朝起きて眠るまで、

だから今日は10月4日、

言い訳だ、毎日更新したかったのに、

でも、そこは、こだわる所ではないな。


一幕物の舞台が得意な演出家がいっていた、

日常の1時間をただ演じても、劇にはならない。

凝縮された1時間を演じるから劇になるんだ。


一幕物のいいところは、俳優と一緒に

ある世界を生きる主人公たちと同じ時間を

共有できることだ


ほら、支離滅裂だ。でもよし。


言葉遊びが楽しい、

『む』についてあれこれ思いをめぐらしたが、

真っ先に思いついた、ムセイオンは『ん』がつくので

使い物にならなかった。muuseumの語源なのは知っていたけど、

そのmouseion(ムセイオン)がmuse(ミューズ)を祭る神殿であった事実は

今日はじめて知った。musicは目に見えない芸術なのだなと改めて思う。


その後は、『無』の付く単語しか思いつかない状況になった。

外来語に走らなければ、『無』から逃れられない、

ない、なくなるのイメージを想起させる『む』という言葉の響き、強力だ。