尾池和夫の記録(354)京都の地球科学(363)二条駅から京北町へ 『氷室』2024年7月

  京都の地球科学(三六三)    2024年7月号

   二条駅から京北町へ
                       尾池和夫

 地下鉄二条駅を出て、JR二条駅の西口で迎えのマイクロバスに、葉子編集長と一緒に乗った。西本さん、塚本さん、酒井さん、田中さんが乗っている。この日は京北町にある「一般社団法人びっくりエコ発電所」と「一般社団法人びっくりエコ研究所」の事務所でそれらの理事会に出席するのが私の目的であるが、葉子編集長は同行して俳句の句材を見つけるのだと楽しみにしている。
 マイクロバスは二条駅から真西へ向かう。しばらく御池通を走る。西ノ京交番が左手にある。地下鉄東西線の上を走っていることになる。西大路御池の交差点を通過するとすぐに島津製作所の本社、同三条工場の広い敷地を両側に見てさらに西へ進む。西小路を交差する。天神川を渡る。
 天神川の水源は、京都市右京区鳴滝の沢山(標高五一五・八メートル)の東麓にある。川は水源から北流して、北区鷹峯台地を囲むように東へ出た後、ほぼ南へ流れる。京都市街の衣笠、北野を流れ、北野天満宮の西側を流れ、しばらく西大路通の東側一〇〇メートルほどの位置を南進する。花園付近、つまり円町駅の南方で大きく西へ向き、一級河川御室川と合流して一級河川西高瀬川と交差する。天神川は御室川と合流してから西京極まで天神川通(国道一六二号、京都市道一八四号宇多野吉祥院線)と並行してさらに南流、南区吉祥院下ノ向町で一級河川桂川に注いでいる。
 天神川は一九三五(昭和一〇)年六月二九日に発生した京都水害(「鴨川水害」とも呼ばれる)で氾濫した。被災後、花園より南側は、現在の位置に付け替えられた。
 御池通が天神川を渡ってすぐ地下鉄東西線の終点太秦天神川駅である。その辺りで御池通の南側をに平行して西に続いていた三条通が大きく北へ曲がり、御池通と交差する。そこの信号には「三条御池」と書いてある。御池通はここで終り、三条通が北西に向かう。その手前を右折して私たちのマイクロバスは国道一六二号線を北上する。道路の東側には太秦安井西裏町があり、西側には太秦和泉式部町がある。その北側の右手の山が双ヶ丘である。この山は京都市右京区御室双岡町にある古生層の孤立丘で国の名勝に指定されている。標高は一一六メートル、徒然草の作者である兼好法師が晩年を過ごした地とされる。山の名の表記がいろいろあり、双ヶ丘のほか雙ヶ岡、双ヶ岡、双岡、並岡、雙丘、双岳などがある。雙ヶ岡の表記は名勝指定名称である。
 一六二号線はやがて京福電気鉄道北野線の宇多野駅の西側を通過する。福王子交番の信号からやや西よりに向かい、鳴滝から梅ヶ畑である。右手に平岡八幡宮がある。山地に入って谷が迫ってくる。峠の名は「御経坂峠」である。峠を越えた所で左側から来た「嵐山高雄パークウエイと合流する。峠を下った所で左へ行くと神護寺である。楓の緑が美しい。
 梅ヶ畑を過ぎると清滝川である。その地域が北山杉で知られる中川である。笠峠の長いトンネルを抜けると京北細野町である。この部分は「栗尾バイパス」と呼ばれている。トンネルを抜けると京北周山町である。周山郵便局を過ぎた所のT字交差点を右折すると国道四七七号線である。この道は桂川の上流に沿っている。右側に桂川がある。橋の上から数人が下を熱心に観察しているのが見えるが、そろそろ鮎の季節なのだろうか。この道を行くと常照皇寺がある。一六二号線を交差点で曲がらずに弓削川に沿ってまっすぐ行くと右手に「NPO丹波マンガン記念館」がある。
  解禁の鮎ぎつしりと魚籠香る        朝田玲子
 四七七号線をしばらく走ると山国郵便局があり、その先を左折する。運動公園があって少年たちが野球を楽しんでいる。さらに進むとそこに「生ごみバイオガス化施設」があってそれを見学する。マイクロバスの駐車した場所の奥には「京北大杉太鼓道場」があり、たくさんの人たちが集まって練習している。降り立つとちょうど全員で合奏する場面に会えた。道場の周囲の森も北山杉である。
 見学したのは「バイオガス化施設のオンサイト利用と農業等との連携を核とした中山間地(里山)と市街地を結ぶ多様な地域資源・エネルギーの脱炭素型循環モデル」という事業の様子である。敷地に大きなタンクが並ぶ。家庭などで出る生ごみを持ち込んで、小規模バイオガス化の実験設備に入れるとバイオガスと堆肥や液肥が生まれる。その液肥を使用した農家が農産物を生み出して食材をホテルなどに供給するというような循環の実現に目標を置いている。
 この事業に取り組んでいる「びっくりエコ発電所」の事務所へ向かった。浅利さん、光本さんが待っている。後藤さん、藤田さんが来ている。近くに住む一瀬さんが来てくれて挨拶し、葉子編集長と庭で話している。理事会後の懇親会で浅利さんたちが私の誕生日を祝って長いバウムクーヘンを用意していて皆さんに祝ってもらった。京北銘木生産協同組合事務局担当理事の一瀬章弘さんが参加して山椒や木の話しで盛り上がった。
 葉子編集長と話していた一瀬裕子さんは「ペンション愛宕道」(京都市右京区京北地区)を経営し、「樹々の会」という三五名ほどのグループで活動している。黒文字を大切にしながらさまざまな活用方法を模索しており、この日は黒文字のかき餅と入浴剤をもってきてくれた。
  黒文字の花や小雨の愛宕道         尾池和夫