いつもは厳しいダンスの先生が
舞台を前にして弱ってる
先生の先生に絞られて
ガラスが割れるんじゃないかってほど怒鳴られて
「私はもう………」
シュンと首をうなだれてる

空いたスタジオで
自主練する姿を私は見た
何度も何度も繰り返し
同じパートを踊って音楽をかけ直して
水を飲む間も惜しんで
踊り続けてる

森の中で
初めての恋をした少女
浮き立って
恥じらって
やっぱり嬉しくて踊り出す
そんな
春のようなダンスだった

「私は踊っても女らしくないから……」
うなだれる先生の姿がおかしくて
私は笑いながら言いました
「だけど少女のようでしたよ」
先生はびくんと首をあげ
「ななな……何が??」
「先生が自主練されてるの、こっそり見てたんです
そしたら春みたいで、初めての恋をする少女みたいで」

先生の目に光が戻るのを見た瞬間
先生はホントに落ち込んでたんだなと
面白がっていた私にもようやくわかった

いつもは厳しい先生が
いつもはもっともっとと要求する先生が
シュンとして
自信はあるけど自信を見失いかけて
つらくなって
誰かのことばを求めてた

たったそれだけのことばで
先生の背中はみるみる伸びた
面白い

ホントのことを言っただけなのに
先生は何度も聞き返して
もう一度同じことばと聞きたいみたいに
「そう? 春? 少女??」
何度も私に同じことを言わせてた

誰だって
誰かの何気ないことばが必要なときがある
どうしたって聞きたいことばがある

いつもは厳しいダンスの先生に
ここぞとばかり意地悪したい気もしたけれど
あんまり先生が嬉しそうだから
何度も同じことばを繰り返してあげた

この恩できれば忘れないでほしい(笑)