………なんかふわふわしてる
白い天井がみえる
いつ寝たんだっけ
あれ、なんか、昨日のこと思い出せないや…………
意味ありげに半開きしてる扉からはすすり泣く声が聞こえる
ドアノブに手をかけたらそこには座り込んだ………
まるで泣き崩れたかのような………
『おはよう』
『キミは……だれ?』
いつからいたのか、隣には浮遊物が彼女に語りかけていた
『僕はユウっていうんだ。よろしくね』
『ユウ……ねぇ、ユウ。彼はなんで泣いてるの?』
『……大切な人がいなくなったからだよ』
とても大切な人だったのが彼女にはわかった
彼の背中から聞こえた気がした
『もう俺には何も失うものはない』と。
ピンポーン
突然鳴ったチャイムに驚いた彼女とは裏腹に
彼は身動き1つしなかった
鍵が掛かっていなかったのだろうか
彼の友達と思われる人たちが次々と入ってきて彼の傍に駆け寄ってきた
慰めているのだろうか
その言葉の数々に彼は反応を見せることはなかった
『ユウ…。大切な人はどんな人だったの?なんでいなくなっちゃったの?』
『……純粋な子だったんだ。嬉しいも悲しいも感情に嘘がつけなくて全部顔にでちゃって……。泣き虫だったからね、僕が彼になっていたら同じ守り方をしたかもしれない』
泣き虫で臆病
子どもみたいでときにはそのおてんばに着いていけなくなるときもある
聞けば聞くほどどうしようない子だった。
とても大人とはお世辞でもいえない子なのはよく理解した
『どうして彼は好きになったのかな、その子のこと』
『……彼にとって始めての理解者だったからだよ』
『理解者……?あんなに友達がいて始めての?』
『……彼は人を信じることができないないんだ。誰しも必ず嘘はつく。それがどんな嘘でも嘘は嘘。信用することはできなかったんだ』
人は良かれ悪かれ嘘はつく
隠し事もあるし、言いたくないことだって当たり前にあるだろう
『だけど大切な人はそれでいいといったんだ。どんなに信じられなくてもそれがキミなんだって………』
それがキミなんだ………?
何故だろう、何か忘れてる気がする……
彼は友達に連れられドライブをすることになった。
乗り気じゃないのは見ていても明らかだった
最後にきた灯台に着くまでは。
『………あれ、また泣き出しちゃったね…』
『ここは大切な人との思い出の場所で大切な人が一番好きだった場所なんだよ』
たくさんの光輝く夜景に灯台の薄暗い灯りが彼等を照らしていた
『わかる気がする……。心が洗われるようだもの……。』
どこか懐かしい……
懐かしい………?
日付はまたぎ、嫌気さすような清々しい朝日が昇ってきていた
時は刻々すぎ、お葬式の準備は着々と進んでいった
彼は相変わらず動けず、友達が手配したようだった
『……死んじゃったのね』
『うん。しかも自ら命を絶ったんだ』
『なんで?彼をこんなにしてまで……』
言いにくそうに合間をあけて言った
『………彼を愛せなくなったからだよ』
衝撃的な発言だった
………はずなのに
何故だろう、私はそれを知っている気がする………
『……サプライズ………あったのよね…』
『………。』
『夜遅くに出てサプライズを用意しにいく彼に不信感をもったのよね…』
『……そう。毎日楽しそうに出ていく彼を止めることができなかった』
ある日突然、何かが切れた。
私を見捨ててまですることってなんだろう
哀しませてまで、苦しませてまですることってあるのだろうか
それは本当に喜びに変えてくれるものなのだろうか
この思いを全て喜びに変えることはできるのだろうか
毎日のように積み重なったこの苦しみは……
『辛くて苦しくて耐えられなくなって………』
『思い出したんだね』
『私は愛を無くしたんだ………』
愛を無くした私は罪悪感に悶えた
彼を愛せない私など私ではない
存在すらしてはいけない
そう、思い出した
『私は死んだの?』
『ううん、まだ完全には死んでない』
完全には?
『キミは居なくなりたいと思いすぎて仮死状態になっているだけなんだ。だからキミが彼の大切な人にまた、戻りたいと願うならキミをあの世界に戻すことができる』
大切な人………
『キミが仮死状態になれるのは24時間。つまりもう時間がない。どちらも選ばなければどのみち死ぬことになる』
『死ねるの?』
『うん。キミが望めば。望めば彼等の記憶からも消せるよ?居なくなりたいと願ったのが仮死状態になった理由だからね』
今なら痛み無く死ねる
少しの痛みも無く、だ
おまけに彼の記憶からもいなくなれる
彼の人生がやり直せるんだ
『………いいの?本当にそれで』
『だってこんな都合のいい死に方できるなんて……』
『うん、もう二度とないと思う。だけどキミの記憶は消せないんだよ?彼が他の人を愛してもいいの?』
決断は揺るがない
『それで彼が幸せになってくれるなら。』
『そっか………。じゃあ、覚悟はいいね。明日からはキミは地獄に送られる。そして彼等の頭からはキミはいなくなる』
『1つ聞いていいかな』
『なに?』
『キミは私だよね』
『"YOU"っていっただろ?w』
『そうだったね』
『じゃあ、お別れだ』
パリンッ
浮遊物は割れた。
『さよなら。私の愛しい大切な………』