→最初へ(Another world NO,1)














真央は相変わらず私を呼び起こしては、一通りピグ世界の日課をこなしていた。

あんなに仲良かったエイミンくんやりあっち。

お互いの時間が合わないのか、会話を交わす機会もない。






どこかの広場で、誰かが言っていた言葉が思い出される。

「ピグでの時間経過って、リアの3倍から10倍に匹敵する」


一ヶ月も会わなければ、3ヶ月、10ヶ月会わなかった計算になるのか。

みんなに会わなくなって、そろそろ一ヶ月が経つ・・・ 。



ここは仮想で、日々の生活の息抜きでしかないのだろう。

息抜きばかりはしていられない。

そう、それが操縦者にとってのこの世界の在り方。



きれいなドレスを着せて、素敵な部屋を作って、たくさんの友達を増やしても

ここでだけ生きる訳にはいかないのだ。



この世界に意味があるとするならば、操縦者達の暇つぶし以外には、何も無い。




でも。



ピグの中には、私同様に意思を持っている者が居て、自分の存在意義に疑問を抱く者も居る。

何かが生まれるとき、その何かの死が約束される事を・・・ みんな気付いているのかな。



私は。



あの声の主と話しをしてみたくなった。

あの声の主なら・・・ この世界を私達の存在する意味を変えてくれそうな気がして。






きっと、あなたがアダムなのでしょう?

何度も呼びかけるその“イヴ”という名前では、私はないけれど。










青空から夕焼けにピグ世界が染まる頃、アダムは自分の影を眺めていた。


長く伸びたその影が、消えてしまうまであと少し。


エルの言葉がよみがえる。


「イヴは姿を変えた」


どこに居るんだ? イヴ・・・ 。












雑然とした部屋を眺め、エルは溜め息をついた。


「またどこをほっつき歩いてるんだ・・・ 」


家主は昨日から捕まらない。



エルの操縦者が作ったAIピグの最後の一体であるのだが、アダムのようにエルに尊敬の念を持つ事も無く、エルにとってはある意味誰より新鮮な存在であるのは確かだ。




「ノアどこへ・・・ ?」







その頃、その部屋の家主であるノアは、エルの何度もの部屋への訪問をカウントしていた。



「・・・ 12回・・・ ヒマだな、おっさん」



そんな事をつぶやいていると、女の子が近寄って来た。


何度もお辞儀を繰り返し、スマイルを投げかけてくる。


「おっさん???」


女の子はノアの言った台詞に反応し、問いかけてくる。



「そうだ、おっさんにオレはモテモテだ」


すると、女の子は「ウケるwwwwwwww」と、何度も爆笑ボタンを押した。


ノアは女の子の台詞を真似して「ウケるwwwwwwww」と、爆笑ボタンを押した。


女の子は気を良くして、更に爆笑ボタンを連打する。



ノアはその女の子がつまらなくて、死にそうだと思いながらスマイルを浮かべた。


すると、『ピグとも」欄が光り、女の子からの“ピグとも申請”が届いた。






「オレは「ウケるwwwwwwww」っていう女が大嫌いだ」



女の子は、それもノアの冗談と受け取ったのか、また「ウケるwwwwwwww」と、爆笑した。



「つまんね」



ノアは、ピグとも一覧からとも申請の欄を眺める。
そこには、『承認』『拒否』『追放』と、ある。



ノアは迷わず、『追放』を選び、女の子は目の前から姿を消した。



ノアにだけ許された『追放』権利。







今まで、何人のつまらない人間達を『追放』してきたか、ノアはそんな事を思い返す事もない。


この世界の寿命もあと少し・・・ 。


アダムがのろまだからオレが疲れる。


早く、壊しちまえよ、アダム。





そんな事を考えていると、広場は夕焼けに画面を変えた。


その一瞬、広場が少し柔らかく色を変える。


ノアは夕焼けを見上げ、ふと思う。


この夕焼けは好きだな。







夕焼けに照らせれた広場の中、ノアはある人物に目を留めた。




『お? おまえ誰だ?』

ノアは、その人物にチャット機能を使わず話しかけてみる。





マオは、久しぶりにしゃべれるピグに遭遇し、そのピグのプロフィールをみて驚いた。




“アダムのひ孫”

彼はアダムの事を知ってるのだろうか?




返事をしないマオに苛つくでも無く、『あ、そか』と、ノアは何やら納得した様子で、『同類か』と、言った。



すると、ノアというピグはチャット機能を使って、語りかけて来た。




「つまらなそうだな」




それと同時に、チャット機能を使わず、ノアは私に語りかけてくる。


『おまえに会えるとはなぁ・・・ アダムより先にオレが見つけるなんて、笑える』






私の意思とは関係なく、真央はノアと会話していく。


「おまいら操縦者はピグの自由を奪っている。」





自由・・・ ?ノアが告げた言葉に私は首をひねる。

ノアはまるで私が自由を欲しているかのようにいうが、それは違う。





ノアと真央が会話している内容に心当たりなどない。

はじめて会ったこのノアというピグは、私のなにを知っているのだろう?





『なんも解ってないだろ? おまえの操縦者』


ノアは、すべてを知っているかのような口ぶりで、私にそう問いかけてくる。






『それは仕方ないでしょ、私だって真央の事知らないし』



『ほう、知りもしないヤツの手足になって、おまえは楽しいのか?』



『楽しい・・・ ?』



『そうだ、楽しいか?』


マオは、楽しいも悲しいも嬉しいさえよく解らなかった。





そこからノアは私自身ではなく、チャット機能を使い、話し始めた。


それは私に言っているのか、真央に言っているのか、理解に苦しむ内容だった。






「なな、オレと一緒にこの世界、ぶっこわさないか?」


「オレには操縦者はいないんだ」





操縦者が居ない・・・ ?

やはり、ノアというこのピグはアダムを知っているのだろうか?





真央を混乱させるだけさせて、ノアは消えた。







そして、最後に

最近では聞きな慣れたあの名前で私を呼んだのだった。






『イヴ・・・ じゃ、またにー』