夏休みの朝は早い。







目覚まし無しで目覚めたナオヤは、かぁちゃんを起こさないように、そっとベッドを抜け出した。

パソコンを買ってもらう為に、かぁちゃんとした約束。


「明日でいいじゃん」と、かぁちゃんは面倒くさがったけど、早速ブログに登録してもらったナオヤだった。






二階の廊下のベンチに座って、ナオヤはパソコンを立ち上げた。


“マイページ”から“ブログを書く”と、選択。





ひとまず・・・ 今日からスタートだ

出来るかなー

がんばろう






“全員に公開”を選択。


“マイページ”から“ブログをみる”を選択。




「おおおお」


すげー!出来た!




かぁちゃんは言ってたっけ。

ブログは誰でも見る事が出来るんだって。

遠い所の誰かが見るなんて、なんかすげー。




「おはよーこんな早く起きんで寝てなさい」ボサボサ頭のかぁちゃんが起きてきて、ナオヤに言った。



「へへ。ブログやってみた」

「へー!  出来た?」

画面を覗き込んだかぁちゃんは、さっきのナオヤと同じように「おおおお」と、言った。



「すごいねっ! やり方よくわかったね」


ナオヤは指示通りにしただけだが、なんとなく鼻が高い。






「あ、ナオちゃん。ついでに・・・ ピグやってみるか?」



ピグ?!?!


かぁちゃんが、いつもやってるアレか!!


時々ピグ内でのゲームをかぁちゃんにやらせてもらった事があるナオヤは、自分のピグが前から欲しかった。




「え! オレのピグ作ってくれるんか?」


「うん。ほら、ここに“ピグを作成”って、あるやろ?」そう言いながらかぁちゃんは、ピグ作成画面を開いた。




「おおおお」

後ろから覗き込みながらナオヤはすごくワクワクした。




「あ」


かぁちゃんは、急に振り返り、ナオヤに言った。





「あんな、ナオちゃん」

なんだかまじめな顔で、かぁちゃんは言った。




「ピグには色んな人が居てな。いい人も悪い人も居るわけだ」

「うん」

「だからココでイヤな気持にさせられる事もあるかもなんだ」

「うん」




「それ、かぁちゃんはイヤなんだ、すごく」と、かぁちゃんは、ナオヤの目をしっかり見つめた。


「うん」


ナオヤは、一瞬考えて、かぁちゃんにこう言った。




「じゃ、じゃ、おれ、イヤな気持にならない! うん、絶対に!」




「へ?」

かぁちゃんは、クスリと笑って、うんうんと、うなづいた。




「そかそか。なら安心。かぁちゃんはそれだけ心配だ」



「うん! あんしん、あんしん」







かぁちゃんは、「よし」と、言って、ピグ作成を事細かく説明してくれた。

「ガイドの話しを全部聞け」と言うので、ナオヤがしっかり指示を読んでいると、「スキップしなさい」と、言ったり・・・ 。どうやらガイドの話しを全部読むと、“引換券”なるものがもらえるらしい。




顔を決めるのには、かなり時間がかかってしまった。かぁちゃんは、変なヒゲをつけようとか、おっさんのような顔を作って、「これがいい!」とか、めちゃくちゃだった。


最後には、なんとなく自分に似た顔になり、“これでOK?”と、選択したらナオヤのピグが出来上がった。


なんだか自分の化身みたいで、ナオヤはちょっとくすぐったかった。




かぁちゃんは、ナオヤそっちのけで、ピグの部屋の中で、ナオヤを動かし、「なんもないなー」とか「んー」と、納得してない様子だ。




「んー。・・・ 初期設定の服のしょぼい事」


「え? そうなの?」




「んむ。おし、ナオちゃん、色んな所で服を引換券でもらいなさい」

そう言い残し、かぁちゃんは、お仕事の用意をしに、一階へ降りていった。


その後、ナオヤは、色んな場所に行って、“ショップ”を見てまわり、試着機能という便利なシロモノで色んな服を試着してみたのだった。








しばらくして、かぁちゃんが戻ってきた。


「なんか良い服あったか?」


画面を覗き込んで、かぁちゃんが笑った。






「あはは。それだけ買ったんか?」


「んー。なんかもったいない」


「あははは ナオちゃん、ケチやな」





悩みに悩み抜いて、胸にNYとプリントされたTシャツだけ買ったナオヤだったが、単価20アメGのこのTシャツに引換券を使うのはもたいないと、かぁちゃんにダメだしされた。



でもナオヤは気に入っている。なんかクールでかっこいい☆




「そんじゃ、ナオちゃん、かぁちゃんお仕事行ってくる」



「ん、いってらっしゃい」



「ナオちゃん、チュウは?」かぁちゃんは、ほっぺを指差した。



「しないしないしないしない! いってらしゃーーーーーーい!」



「じゃ、行ってくるねぇ、あんま長い事しないんよ」と、かぁちゃんはお仕事へと出発した。







一人になったナオヤは、ピグ内の色々な所に行ってみた。




誰かと会話するのは、まだ恥ずかしくて、みんなの会話を見ていただけのナオヤだった。


かぁちゃんが言うように、暴言を吐いてる人も居たけど、言われている人がそんなに気にしていないようで、ナオヤの気持は少し軽くなった。





あっという間に、時間は過ぎ「そろそろ宿題しよう」と、ナオヤがピグ画面を閉じかけた時、誰かが部屋に来たというお知らせが、画面右端に表示された。




「おおおお “きたよ”だ」


ナオヤは初“きたよ”の相手を見てみたくなり、部屋に戻ってみた。


「お!まだ居た。グッピグと、お辞儀するんだよな」

ナオヤは、昨日かぁちゃんにピグマナー講座を仕込まれていたので、失礼のないように訪問者にグッピグとお辞儀をしてみた。


すると、訪問者はニヤリと笑って、こんな事を言った。






「忠告してやろう、そのTシャツはイケてない」


少しだけ警戒して、少しだけカチンときたナオヤだった。




「これが好きです」


すると、またニヤリと笑って

「ほう。よく似合ってる」と、三回うなづいた。


ナオヤは、お辞儀を三回して「ありがとうございます」と、言った。




すると、訪問者はこんな事を言った。

「そかそか。ナオヤの略なんだな、“ NY”って」


「そうですね」と、ナオヤは素直に、その偶然の一致を面白く思った。




「んじゃ、オレ、おまいの事ニューヨークって呼ぶわ」


「あ、はい、よろしくお願いします」


「なーがーいー突っ込めー」



「すみません」

ナオヤは訪問者が、何が言いたいのかはまったく分からないが、一応謝ってみた。





「オレはノアだ。ノア様でもノア閣下でも呼ぶが良い」


その銀髪のガラの悪そうなノアという訪問者の扱いにすっかり困ってしまったナオヤは「すいません、落ちます」と、打ち込んで、お辞儀をした。



すると、ノアは「またな」と、ニヤリと笑って「選ばれし者よ」と、言い残し姿を消した。











ブラウザを閉める瞬間、“ピグとも”欄が光った事に、ナオヤは気付かなかった。


ナオヤのプロフィール欄にある“ピグとも数”が、(1)と、なった事もこの時のナオヤは気付いていなかった。












つづく     Another side<番外編>