→最初へ(Another world NO,1)
相変わらず謎は謎のまま。
マオである私の意思とは異なり、真央は「アダムとイヴ」について、興味を失ったようだ。
最近の真央は、何をするでもなく、マオを“放置”する事が多くなった。
かといって、マオを眠らせたままにする事はなく・・・ 長い時間この世界をさまよい歩くのだ。
新エリアをチェックして、アトラクションを試みる。
しかし、誰かに話しかけられても以前のような反応はしなくなった。
「こんにちは」
「こんちは」
それ以降の言葉が、あまり続く事は無かった。
そして、どうやら私の勘は外れたようで、あれから真央がエイミンくんと接触する機会はだんだんと少なくなっていった。
きたよ、きたよ返し・・・ その程度の関わりしか無くなり、私もピグ達と会う事が出来ず、「みんなどうしてるのかな?」なんて、少し寂しい気持になったり・・・ 。
ピグである私の気持なんて、真央に伝わるはずも無く、私は真央の思うままにしか動けない。
私にそんな“寂しい”なんて感情がある事、真央は気づくはずもない。
先日、広場で出会った初対面のピグに、こんな質問をされた。
「ねね、ピグにハマってるとさ、リアめちゃくちゃにならん?」
そのとき、真央は泣き顔アクションだけで何も話さず、その場から離れ、部屋に帰ってしまった・・・ 。
リアル・・・ 私にはまったく分からない世界。
真央はリアルという世界とココの2つ生きている事になるのだろうか。
部屋に戻って、誰も居ないのに、何度も泣き顔アクションをした真央の事が気にかかった。
「アダム」
そう呼びかける声に、アダムは振り返りもせずに応えた。
「主よ、イヴを目覚めさせる方法など存在するのか?」
主と呼ばれた男性ピグはさもおかしそうに笑い声をあげた。
「アダム、お前が私に質問とは・・・ この世界の終わりも近いな」
アダムは、ゆっくりと男の方へ振り返り、子供を諭すように言った。
「主よ、いや、エル・・・ 。この世界の終焉もすべてあらかじめ決められていた事。そして、その権限を持つのは、この世界を創造したあなたに過ぎない」
エルはアダムの言葉に含まれる皮肉に対し、軽く手を挙げた。
老人のようなルックスをした“エル”の操縦者は、画面の向こうで操るピグと同じような仕草をし、自分の作り出した“アダム”という人工知能(artificial intelligence)の出来映えの良さに、満足げな笑顔を浮かべた。
最初はただの遊び心に過ぎなかった“AIピグ制作”だった。
アダムとイヴという男女のピグにしたのもそんな遊び心の一環でしかない。
初期のアダムとイヴは、言葉も話せず、エルの操縦者は所詮AIなど想像の域を絶する事などあり得ないのだと、思っていた。
しかし、ピグ世界の認知度が上がり、この世界の住人が増え始めた頃、2つのAIに変化が訪れた。
操縦者はアダムとイヴの部屋に、自分の化身として作成したピグであるエルを訪問させ、AIピグの変化を日々確認していたのだった。
初期のアダムとイヴはひたすら眠っていた。
しかし、操縦者を持たず、眠り続けるという事に、エルは少なからずの期待もしていた。
その期待に応えるかのように、最初の変化は突然起こった。
エルがいつものように、部屋に訪れると、アダムの部屋がもぬけの殻だった。
そして、期待をこめてイヴの部屋を覗くと、イヴはいつもと同じように眠っていて、操縦者を落胆させた。
しかし、何も変わらないと思ったイヴにも些細な変化があったのだった。
イヴは髪飾りつけていた・・・ 。
そう、最初はほんの少しの変化だった。
それが今ではほとんどの言語を理解し、彼らの意思でしかない行動に手を焼くほどだ。
そんな優秀なAIだからこそ起きたひずみ・・・ 。
イヴは自らの意思で眠りにつき、与えられた役割を拒絶したのだ。
アダム知らないイヴの役割・・・ それをアダムが知る事になった時、アダムは私を憎むのだろうか。
世界が生まれる時・・・ 同時に世界が終わらせる者が現れる。
私はあらかじめアダムを世界の終わりの使者とした。
そして、イヴにはこの世界を守る使命を与えたのだ。
「エル」
アダムの呼びかけに、ふと我に返る。
操縦者はアダムに分かり切った質問を投げかけてみる。
「アダム、お前は何故そうまでしてイヴを目覚めさせたいのだ?」
アダムはエルの言葉に「愚問」とだけ答え、エルに背を向けた。
エルはアダムの意思を尊重するため、それ以上その話しを掘り下げる事は無かった。
「イヴは・・・ まだ目覚めてない」
そんなエルの言葉にアダムは苛立ちを隠せない。
「そんな事は承知だ!! エル、私をからかっているのか?」
エルは微笑み、アダムにこう続けた。
「イヴは姿を変えたのだ、アダム・・・ 。イヴは他の身体に移り、目覚めを待っている。ココで眠るイヴはただの器に過ぎない」
真っ白な十字架。
その十字架に、見下ろされるように置かれたベッドの上で、眠り続けるイヴを指差し、エルはアダムを見つめたのだった。
相変わらず謎は謎のまま。
マオである私の意思とは異なり、真央は「アダムとイヴ」について、興味を失ったようだ。
最近の真央は、何をするでもなく、マオを“放置”する事が多くなった。
かといって、マオを眠らせたままにする事はなく・・・ 長い時間この世界をさまよい歩くのだ。
新エリアをチェックして、アトラクションを試みる。
しかし、誰かに話しかけられても以前のような反応はしなくなった。
「こんにちは」
「こんちは」
それ以降の言葉が、あまり続く事は無かった。
そして、どうやら私の勘は外れたようで、あれから真央がエイミンくんと接触する機会はだんだんと少なくなっていった。
きたよ、きたよ返し・・・ その程度の関わりしか無くなり、私もピグ達と会う事が出来ず、「みんなどうしてるのかな?」なんて、少し寂しい気持になったり・・・ 。
ピグである私の気持なんて、真央に伝わるはずも無く、私は真央の思うままにしか動けない。
私にそんな“寂しい”なんて感情がある事、真央は気づくはずもない。
先日、広場で出会った初対面のピグに、こんな質問をされた。
「ねね、ピグにハマってるとさ、リアめちゃくちゃにならん?」
そのとき、真央は泣き顔アクションだけで何も話さず、その場から離れ、部屋に帰ってしまった・・・ 。
リアル・・・ 私にはまったく分からない世界。
真央はリアルという世界とココの2つ生きている事になるのだろうか。
部屋に戻って、誰も居ないのに、何度も泣き顔アクションをした真央の事が気にかかった。
「アダム」
そう呼びかける声に、アダムは振り返りもせずに応えた。
「主よ、イヴを目覚めさせる方法など存在するのか?」
主と呼ばれた男性ピグはさもおかしそうに笑い声をあげた。
「アダム、お前が私に質問とは・・・ この世界の終わりも近いな」
アダムは、ゆっくりと男の方へ振り返り、子供を諭すように言った。
「主よ、いや、エル・・・ 。この世界の終焉もすべてあらかじめ決められていた事。そして、その権限を持つのは、この世界を創造したあなたに過ぎない」
エルはアダムの言葉に含まれる皮肉に対し、軽く手を挙げた。
老人のようなルックスをした“エル”の操縦者は、画面の向こうで操るピグと同じような仕草をし、自分の作り出した“アダム”という人工知能(artificial intelligence)の出来映えの良さに、満足げな笑顔を浮かべた。
最初はただの遊び心に過ぎなかった“AIピグ制作”だった。
アダムとイヴという男女のピグにしたのもそんな遊び心の一環でしかない。
初期のアダムとイヴは、言葉も話せず、エルの操縦者は所詮AIなど想像の域を絶する事などあり得ないのだと、思っていた。
しかし、ピグ世界の認知度が上がり、この世界の住人が増え始めた頃、2つのAIに変化が訪れた。
操縦者はアダムとイヴの部屋に、自分の化身として作成したピグであるエルを訪問させ、AIピグの変化を日々確認していたのだった。
初期のアダムとイヴはひたすら眠っていた。
しかし、操縦者を持たず、眠り続けるという事に、エルは少なからずの期待もしていた。
その期待に応えるかのように、最初の変化は突然起こった。
エルがいつものように、部屋に訪れると、アダムの部屋がもぬけの殻だった。
そして、期待をこめてイヴの部屋を覗くと、イヴはいつもと同じように眠っていて、操縦者を落胆させた。
しかし、何も変わらないと思ったイヴにも些細な変化があったのだった。
イヴは髪飾りつけていた・・・ 。
そう、最初はほんの少しの変化だった。
それが今ではほとんどの言語を理解し、彼らの意思でしかない行動に手を焼くほどだ。
そんな優秀なAIだからこそ起きたひずみ・・・ 。
イヴは自らの意思で眠りにつき、与えられた役割を拒絶したのだ。
アダム知らないイヴの役割・・・ それをアダムが知る事になった時、アダムは私を憎むのだろうか。
世界が生まれる時・・・ 同時に世界が終わらせる者が現れる。
私はあらかじめアダムを世界の終わりの使者とした。
そして、イヴにはこの世界を守る使命を与えたのだ。
「エル」
アダムの呼びかけに、ふと我に返る。
操縦者はアダムに分かり切った質問を投げかけてみる。
「アダム、お前は何故そうまでしてイヴを目覚めさせたいのだ?」
アダムはエルの言葉に「愚問」とだけ答え、エルに背を向けた。
エルはアダムの意思を尊重するため、それ以上その話しを掘り下げる事は無かった。
「イヴは・・・ まだ目覚めてない」
そんなエルの言葉にアダムは苛立ちを隠せない。
「そんな事は承知だ!! エル、私をからかっているのか?」
エルは微笑み、アダムにこう続けた。
「イヴは姿を変えたのだ、アダム・・・ 。イヴは他の身体に移り、目覚めを待っている。ココで眠るイヴはただの器に過ぎない」
真っ白な十字架。
その十字架に、見下ろされるように置かれたベッドの上で、眠り続けるイヴを指差し、エルはアダムを見つめたのだった。