猫とジルコン                     (やすらぎ)


ジルコンという名前の猫は、明日が誕生日だということを知っていた。毎年、飼い主は彼にジルコンのペンダントをプレゼントしてくれた。ジルコンは1月5日の誕生石で、やすらぎを意味すると聞いていた。ジルコンはそのペンダントを大切にしていたが、今年は何か違うものが欲しいと思っていた。


飼い主はジルコンに首輪をつけていた。それは首輪型の最新のデバイスで、スマホで運動量や体調を管理できるというものだった。ジルコンはその首輪が嫌いだった。自由に外を歩き回りたいのに、いつも飼い主に監視されているような気がしたからだ。


そんなある日、ジルコンはテレビで三大流星群の一つ「しぶんぎ座流星群」のことを知った。2024年1月4日の18時頃に活動が極大を迎えるというのだ。日本では4日の深夜から5日の明け方が観測チャンスだという。ジルコンは流れ星を見たことがなかった。もしかしたら、流れ星に願い事をすれば、首輪を外してもらえるかもしれないと思った。


ジルコンはその日の夕方、飼い主が仕事に出かけた隙に家を抜け出した。首輪は外せなかったが、スマホの通知音を消しておいた。ジルコンは近くの公園に向かった。空は晴れていて、星がきれいに見えた。ジルコンはしぶんぎ座を探した。しばらくすると、一筋の光が空を横切った。流れ星だ!ジルコンは心の中で願った。


「首輪を外してほしい」


すると、不思議なことが起こった。ジルコンの首輪がぱちんと外れて、地面に落ちたのだ。ジルコンは驚いた。願いが叶ったのだ。ジルコンは首輪を見下ろした。すると、首輪の中から小さな声が聞こえた。


「ジルコン、大丈夫?」


首輪の中には飼い主の声が録音されていたのだ。ジルコンは首輪を拾い上げた。飼い主の声が続いた。


「ジルコン、これはお誕生日プレゼントだよ。この首輪は特別なものなんだ。君の願いを叶えてくれるんだ。でも、一回だけだからね。君は何を願ったの?」


ジルコンは涙が出そうになった。飼い主はジルコンのことを思って、こんなに素敵なプレゼントを用意してくれたのに、ジルコンは首輪を外したいと願ってしまったのだ。ジルコンは自分がどれだけ飼い主を傷つけたかと思うと、胸が痛んだ。


ジルコンは首輪を咥えて、家に走って帰った。飼い主が帰ってくるのを待った。飼い主が帰ってきたとき、ジルコンは首輪を見せて、ごめんなさいと言った。飼い主はジルコンを抱きしめて、笑って言った。


「ジルコン、大丈夫だよ。君の願いは叶ったんだから。でも、これからは首輪を外さないでね。君のことが心配だから。君は私にとって、一番大切な存在なんだから」


ジルコンは飼い主に甘えて、ありがとうと言った。ジルコンは首輪をつけ直して、飼い主と一緒にベッドに入った。ジルコンは空を見上げた。まだ流れ星が見えた。ジルコンはもう一度願った。


「飼い主とずっと一緒にいられますように」


ジルコンは幸せな気持ちで眠りについた。ジルコンは知らなかった。その首輪は、本当は二回まで願いを叶えてくれるものだったということを。






※フィクションです