読書覚書。藤沢周平。
「橋ものがたり」
・・・橋を舞台にした10の短編集。
出会いの場であり、
あちらとこちらを明確にわける場でもある橋が、
印象的、効果的に使われていておもしろかった。
感動したのは「赤い夕日」。
結婚して幸せになるため、育ての親からこちらへ戻ってきてはいけないと言われた橋・・・の物語。
悲しいけど、幸せな気持ちにもなれた話。
「喜多川歌麿おんな絵草子」
・・・
喜多川歌麿が画材として惹かれる女性達にまつわる連作短編。
サブストーリーとして、
写楽の登場や、若き日の滝沢馬琴・・などが折り込まれている。
葛飾北斎、写楽、滝沢馬琴・・などが同時に生きた時代!
写楽の絵に対する、歌麿の評価などがおもしろかった。
短編各種
「玄鳥」
「三月の鮠」・・「蝉しぐれ」にも似てるけど、ずっと短く軽く読みやすかった。
「闇討ち」
「浦島」
「鷦鷯(みそさざい)」・・後年の「静かな木」に近い感動があった。
静かに沈んで生きる人が、
小さな笑いを取り戻すストーリーは、藤沢周平の筆に合ってる気がする。
「又蔵の火」
「相模守は無害」
「振子の城」
「長門守の陰謀」
「本所しぐれ町物語」
・・・
話の度に主人公が変わる、1つの町を舞台とした連作短編。
妻としっくりいかない油屋、
浮気をやめれず、人生を踏み外しそうな小間物屋の若旦那、
正義感のつよい桶屋の見習い、
貧乳を気にする若妻、 などなど・・・
人々の悲哀をつつむ町。
おもしろかった。
読んでいくうちに町の様子や風景がよくわかり、
自分もその一角に立っているような感覚で読めた。
点と点がつながっていくような感じ。
よかったのは、猫が話のオチになる「猫」、
「ふたたび猫」「おしまいの猫」
15才の見習いが大人になっていく「春の雲」は読後感がよかった。
「決闘の辻」
・・・5人の伝説的な剣客を描く、短編5編。
「二天の窟(宮本武蔵)」
「死闘(神子上典膳)」
「夜明けの月影(柳生但馬守宗矩)」
「子弟剣(諸岡一羽斎と弟子たち)」
「飛ぶ猿(愛洲移香斎)」
兵法者それぞれの違いがおもしろく、読みやすかった。
といっても宮本武蔵以外知らなかったけど・・。
最後の「飛ぶ猿」は戦国以前の話で、ほとんどファンタジー!
おもしろかった。