さて、内田樹氏「街場の憂国論」を購入したので、

その感想など。




内田樹氏は日本辺境論とか街場のメディア論とか

数冊は読んでます。日本辺境論は面白かった。


「街場の憂国論」の冒頭、

“壊れゆく国民国家”について。


これは今年5月8日の朝日新聞に掲載。

その時も、色々と、話題になってました。


■↓ここで全文読めます(内田樹ブログ)

http://blog.tatsuru.com/2013/05/08_1230.php


大意

■グローバル資本主義で、国民国家は崩壊しつつある

■国民国家に根拠を置かないグローバル資本主義の

  要求に国民国家が服従するのはおかしいのではないか

■安倍総理は、グローバル資本主義推進者、

  そのうえで愛国心・ナショナリズムを利用

■グローバル資本主義=国民国家崩壊は

  世界中で進行している


的な。詳しく/全文は上記ブログにて。


感想として色々と示唆に富んでるけど、最終的に

グローバル資本主義=悪玉論で、出口論なし。か。


まあ、それはそれでよいかもですが。

でも、ちょっとなあぁぁ、という気はします。


氏も最後に書いていますが、世界中で起きてる

事なんだから、世界の国はどうしているのか。


そういう関心の持ち方もありでは。と。


例えば、欧州では国家の枠組みを超えて

グローバル資本主義の暴走(?)を抑制しようという

試みもある気がします。


本来の意味のCSRとか、SRIとか、GC10とか。


“壊れゆく国民国家”より引用。


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>原発を再稼働させて電力価格を引き下げさせるのは「製造コストの外部化」である。(中略)本来企業が経営努力によって引き受けるべきコストを国民国家に押し付けて、利益だけを確保しようとするのがグローバル企業の基本的な戦略なのである。

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確かに、それは、その通りで。


でも、要は、ではどうすればその

「コストの外部化」を阻止できるか。それが論点では。


例えばISO26000が要求するCSRの7つの主要テーマ、

統治、人権、労働、環境、等々はそれらの

「コストの内部化」を要求する運動という気がします。


そもそもISO26000が定義するCSRは

サステナビリティへの貢献。


つまり、CSRはグローバル資本主義の市場論理に

サステナビリティをビルドインしようという

(無謀な?)試みという気も。


CSRとかまだ緒についたばかりの試みなんで

今後どうなるか分かりませんが・・・


否定するにしろ肯定するにしろ

やっぱりそういう海外事例とか踏まえないで

日本的な情緒論で、悪玉論だけ言ってても・・・


ダメな気もします。なんだかなあ。と。


基本的に、日本って政治制度・システムに関しては

超後進国では・・・少なくとも得意分野じゃなし。か。


・・・日本の得意の“型”って、

キャッチアップであり、コピペでしょ、、根本的には。

そう思うですけどね。


日本国内だけで、ゴチャゴチャ言ってても、無駄かも。

海外事例とか、もっと見るべき。


下手な考え、休むに似たり。。極論すれば。


う~ん、、仏語とかペラペラの氏が欧州事情とか

知らない訳ないし・・・

所詮、敗北主義的な構改という評価なのかな。



次。


果たして、

安倍総理は、グローバル資本主義推進者なのかなぁ。


若干、違和感、あり。


 さてこの人は、、、

wikiの写真より


・・・例えば、

とっくに債務超過してる東電を延命させるのが

グローバル資本主義推進者?


要は、ただ・・・


にぎってる。だけ。


という気もします。


総理の言う、グローバリズムなんて、自己都合の

いいとこ取りだけ。


もちろん、部分的には、そういう面もある訳ですが、

最終的には、にぎってる。だけ。


・・・と考えた方が、本質に近い。現状認識の上で。

という気も。


大体、グローバリストが、

“美しい国へ”なんて無根拠かつ薄気味悪い

本は書かない気もします。し。


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■内田樹ブログ/特定秘密保護法について
http://blog.tatsuru.com/2013/11/08_1144.php

秘密保護法は、改憲を米によって阻止された、

総理の集団的自衛権につなげる敗者復活戦・・・

こういう分析はホント、鋭いと思うのですが。


■「欧州2020(EUの2020年までの戦略)の概要」
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000263/eu_2020.pdf

結局、欧州CSRって本質的には、フレキシキュリティとか

ソーシャルインクルージョンなんかとセットの公共政策・・・

という気がします。なんか、日本とは程遠い、気が。


そういう日本に蔓延する程遠い距離感(後進性)の一因が

こういう内田氏的な言説にあるのでは。という感想でした。。


・・・でも、朝日新聞の客層に見事にチューニングしてる

気はします。その辺の“芸”はさすが。。お見事!。


最後に、ちょっと、根本論、書きます。


「街場の憂国論」の第一章タイトルは

『脱グローバル宣言、あるいは国民国家擁護のために』


個人的には、脱グローバルなんて、絶対、無理。と思う。


でも、内田先生の信頼できるとこは、その一方で、

国民国家なんて所詮、擬制、である。


と断言してるとこで。


で、そうならば、

改良型グローバル資本主義がもし仮に、国民国家より

ベターな形態になりえるなら、改良型グローバル資本主義に

乗り変えればいいだけでは。とも、そんな気もします。


甘い。。ってか。。



しかし、内田先生の論理の建て付けも、ちょっとな~~、と。


国民国家=善、、そこに根拠を置くか。ナショナリストか的な。


はっきり言って、国民国家だって、胡散くさいとこ、

いっぱいあると思うけど。。


そういうVSの二項対立構造なんですかねぇ。


国民国家て、再分配機能や社会的包摂という機能を

強化しながら、グローバル資本主義と併存する 、


そのように進化すべきという気が。


それを、グローバル資本主義との連携と呼ぶか、対立と

呼ぶかは解釈次第と言うか、まあ、両方かな。とも。


たとえば・・・


ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)と

フレキシキュリティをセットにした欧州型のカタチ。


上記のようなものは、内田先生的な言説からは

絶対、生まれ得ない、よなぁぁ。


結局、日本の政治風土の決定的な後進性って

“第三の道”を経由してないところにある、と思えるんですね。


世界中が、30年位前、そういうカタチを模索してる時、

ニッポンは全然、別世界にいたし。まあ、絶頂期だったから。


例えば、最賃をあげろ、(特定国内の)雇用を維持しろ、

と言ってるだけで、問題は解決するのか。


さらに、左側を批判するなら、


格差解消、同一労働同一賃金とか言っても、

『誰かの賃金があがれば、誰かの賃金が下がる』という

基本のキすら、理解されていない気が、この国では。


(オランダもスウェーデンも、その問題をクリアしてる訳で・・・)



最終的には・・・。


フレキシキュリティ、いわば大転職社会の実現みたいな

ものが、国民国家としてのグローバル資本主義に対峙する

唯一の戦術なんでは。とも思います。


・・・どこで働いても、職あればいいじゃん。的な気もしますしね。


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youtube■内田樹「街場の憂国論」グローバル企業にとって国民国家は邪魔
http://www.youtube.com/watch?v=1hz4p5iLfB0