◇サイコパスに狙われやすい人
これまで、サイコパスは、病的に嘘をつき、人を利用できる人か否かで判断し、能力あるサイコパスは、狡く、人を操ろうとし、そこまでの能力がないサイコパスは、利用できる人間に寄生して生きるといった特徴を有しているというお話をさせていただきましたが、犯罪心理学者のロバート・D・ヘアは、『診断名サイコパス』の中で、このようなサイコパスをもって、「社会の捕食者」と表現しています。
◇対策序論
では、どうしたら、このようなサイコパスの被害に遭わないようにすることができるのでしょうか
前回お話させていただいたように、サイコパスの原因は、前頭葉等の脳の異常・損傷だとされているので、その異常・損傷が治癒しない限り、サイコパスの症状が改善されることはありません。
そうすると、サイコパスに倫理や道徳を説いて、改心させようとすることは、全く無意味です。
そればかりか、サイコパスの闘争心に無駄に火をつけてしまったり、逆恨みをされてしまうことにもなりねません。
そう考えると、結局、サイコパスという、通常の人間と全く異なる思考をする人間がこの世に存在するということを、常に意識しておくことで、サイコパスとなるべく関わらないようにして生きていくことが重要なのです。
しかしながら、サイコパスは、サイコパスの特徴の中でご説明させていただいたとおり、(1)口達者で、表面的には魅力的で、しかも、いたって普通の人の顔をして、身近なところに潜んでいることが多いので、見抜くことは、なかなか難しいかもしれません。
『沈思黙考Vol.11~サイコパス』の①及び②で挙げた心理テストや診断テストも、絶対的なものではないのはもちろんのことですが、それだけでなく、前述のように、サイコパスは(1)口達者で、表面的には魅力的なので、診断テストに挙げたような特徴を周囲に気づかれないように振舞うことにも長けていたりするからです。
もっとも、サイコパスの特徴のうち、(5)良心の呵責、後悔、罪悪感などが欠如している、(6)感情が浅い、(7)冷淡で人に共感しないという項目については、私見ですが、そういう性質を有する人が、良心の呵責や後悔の念、罪悪感に苛まれたり、深い感情や暖かい感情を示し、他者に共感をする演技をすることは、著しく困難だと思っています。
それは、そのような感情が一切ない人が演技をしてできるような感情ではなく、演技しようとしても、どこかにちぐはぐなところが垣間見れてしまうことが多いからです。
そして、仮に上記の(5)~(7)のような特徴を有する人が、サイコパスでなかったとしても、(5)良心の呵責、後悔、罪悪感などが欠如している人は、平気で裏切ったり、他者を貶めたり、果ては犯罪に手を染めてしまうことも少なからずあるので、そのような因子があると察知したら、そのような人から上手に距離を置き、フェイドアウトしていくべきだと私は考えます。
しかし、そのように注意をしていても、結果的にサイコパスと関わってしまった場合、どうしたら良いのでしょうか
◇身近に潜むサイコパス
前回ご紹介させていただいたサイコパス診断の20項目は、そのままサイコパスの特徴を挙げたものだというお話をさせていただきましたが、それを概観すると、サイコパスは、よほど変わった人のように思えてしまうかもしれません。
とりわけ、猟奇的な犯罪者がサイコパスであった例などがマスコミで報道されると、サイコパス=犯罪者という誤解をしてしまいがちですが、サイコパスが必ずしも犯罪者になるとは限りません。
サイコパスは、前回ご紹介させていただいたサイコパス診断にも挙がっているように、(1)口達者で表面的には魅力的なので、仮にそのような人が猟奇的な犯罪を犯しても、「あの人ならやると思っていた」という反応が来るような人ばかりではありません。
また、(7)冷淡で人に共感しないので、他人が自分にとって使える道具か否かで人を判断します。そして、(4)狡くて、人を操りたがるので、使える道具だと判断した他人に対しては、巧みな演技で自分を善人だと信じ込ませて近付き、利用し尽くすのです。
つまり、サイコパスは、傍から見れば、いたって普通の人であるように見えることが多いのです。
そして、このサイコパスは、『良心をもたない人たち』の著者であるマーサ・スタウト博士によれば、アメリカでは、約25人に1人がサイコパスであるそうです
もっとも、このサイコパスの割合は、地域性によって差があり、アメリカをはじめとする欧米が25人に1人とされているのに対し、日本をはじめとするアジア地域では、200人~300人に1人の割合といわれています。
それなら少ないと思うか、多いと思うかは人それぞれですが、私の高校の同級生は450人前後いたので、そのうちの2人ぐらいがサイコパスの可能性があると考えると、私には多いように思えてしまいます
◇サイコパスの行く末
さて、サイコパスが必ずしも猟奇的犯罪者になるとは限らず、いたって普通の人のような顔をして、身近に潜んでいるというお話をさせていただきましたが、そのような人のサイコパスの側面が色濃く出て来た場合、犯罪者に至らないにしても、どのようになっていくのでしょうか
これまで述べてきているように、サイコパスは、いたって普通の人のように見えるのですが、(4)狡くて、人を操りたがるという特徴があるので、会社を起業して社長になったり、一般企業で管理職になったり、教師になったりして、自分の地位を利用して他人を支配できるような場所を求め、そこで自分の支配欲を満たしていくのですが、このようなサイコパスは、自分よりも弱い立場の人には威圧的な態度を取ることも多いようです。
これに対し、そのような地位を得られるまでの能力がないサイコパスは、(8)責任感がなく、(10)寄生虫のように他人に依存して行動するという特徴からもわかるように、他者の同情を巧妙に買うような演技で、自分が使えると思った他者に寄生し続けます。
他方、理由は、次回のサイコパスの原因分析でご説明させていただきますが、サイコパスの中には、非常に知能が高い人もいます。
(4)狡く、人を操るのが上手い上に、(1)口達者で表面的には魅力的なサイコパスが、高い知能を有していた場合、悪徳なビジネスや狡猾な詐欺などで大金を稼いだり、カルト教団の教祖や幹部になったり、中には一国の独裁者になっていくようなケースもあります。
◇次回予告
このように見てくると、サイコパスは、普通の人の顔をしながら身近に潜んでいるが、一度利用され始めると、本当に危険だということが、お分かりいただけたと思います。
そこで、次回は、このようなサイコパスの発生の原因を探りながら、対処法を考えていきたいと思います