はじめに

アルコール多飲歴のある患者さんの術後や急な入院において、「離脱症状をどう防ぐか」は常に緊張感を伴うテーマです。

CIWA-Arスコアに基づいたプロトコル管理が普及しつつありますが、現場では依然として「どの薬剤を、どのタイミングで、どの量使うか」の判断に迷う場面も少なくありません。

 

ざっくり結論

 

 TODAY'S
 

 

基本はジアゼパム開始し7日ほどで漸減中止
高齢者・肝障害合併例ではロラゼパムが推奨される


 

 

 

 

CIWA-Arとは?



 

Clinical Institute Withdrawal Assessment for Alcohol–Revisedの略で、 アルコール離脱症候群の重症度を迅速かつ定量的に評価するために開発されたスケールです。

  1. 嘔吐
  2. 振戦
  3. 発汗
  4. 不安
  5. 興奮
  6. 頭痛
  7. 見当識障害
  8. 聴覚異常
  9. 視覚異常
  10. 触覚異常

この10項目を各0~7点のスケールで評価し、 各項目の得点を合計して算出します。

総点が10未満であれば軽度の離脱と判断され、 10~20点であれば中等度、 20点以上であれば重症と評価されます。

点数の詳細については省略しますが、CIWA-Arスコア10点以上で薬物療法が推奨されます。

 

 

なぜアルコール離脱の治療・予防が必要?

 

  1. 「Kindling現象(燃え上がり現象)」の阻止
    アルコール離脱を「気合で乗り切る」ことが最も危険な理由です。離脱を繰り返すたびに脳の神経過敏性が増幅され、次回の離脱症状がより早期に、より重篤に出現するようになります。
  2. 脳の「興奮・抑制バランス」の不可逆的変化を防ぐ
    長期間の飲酒により脳はアルコール(抑制性)に対抗して、常に「アクセル(興奮性)」を全開にしている状態です。薬物療法は、この「暴走したアクセル」を一時的に外部から抑え込み、脳が自律的にバランスを取り戻すまでの「安全な橋渡し」の役割を果たします。
  3. 致命的な合併症の回避
    離脱そのものだけでなく、それに付随するリスクを管理する必要があります。代表的な合併症として振戦せん妄、離脱けいれんがあります。
 

第一選択:ベンゾジアゼピン系(BZ系)の使い分け

アルコール離脱の第一選択薬はBZ系ですが、現場では「とりあえずセルシン®(ジアゼパム)」という処方に遭遇することが少なくありません。しかし、アルコール多飲者の背景は若年者の離脱から高齢者の重症肝不全まで多岐にわたります。

薬剤師としては、「PK/PDの視点」から最適な一剤を提案したいところです。

 

 

代謝経路は?

ジアゼパム
CYP2C19や3A4による代謝を受けて活性代謝物(デスメチルジアゼパム)を生じます。肝機能が低下していると、血中濃度が予期せず上昇・持続する可能性があります。

 

ロラゼパム

直接グルクロン酸抱合されて排泄されます。肝機能低下例や高齢者でも代謝が比較的保たれるため、蓄積による過鎮静や呼吸抑制のリスクを最小限に抑えられます。肝硬変などの肝機能障害がある人にはこちらのほうが安全に導入できると考えられています。

 

 

半減期は?

安全性の面から見ればロラゼパムの方がよさそうですが前述の通り、現場ではジアゼパムが使用されることの方が多いです。その理由の一つに作用時間の長さが関係しています。

 

作用時間が長いジアゼパムの方であれば血中濃度が安定し、中止後も緩やかに低下していくためリバウンドが起きにくいというメリットがあります。ロラゼパムは途中で効果が切れる可能性がある一方で細かな調節をしたい場合に向いています。

 

病棟での管理の点からジアゼパムの方が好まれて使われている印象です。また、内服ができないような状態の場合はジアゼパム筋注も検討されます。ロラゼパムの注射薬は現在日本にはないため実質一択となります。

どちらもメリット・デメリットがあるため、どちらが適しているか提案できるようになるとよいでしょう。

 

おまけ:もしBZ系導入しても不穏が強い場合は?

治療初期においてはBZ系を導入しても不穏症状が強く出る場合があります。その場合にはプロポフォール、デクスメデトミジン、ハロペリドールの追加が検討されます。