私の生きる道なんて、始まりから地割れで途切れて終わっていたんだ。何をしてもダイブして陽の届かぬ崖下でケチャップになる結末しか思い浮かばず、ひしゃげた線路の上で頭を抱えて、涙を流し続けていた。
足掻き、呻き、振り返れば荒野が広がっている。
空を流れる灰色の雲が私を指差して笑っている。
腰に下げたリボルバー、引き抜いて、有りっ丈の銃弾を空に向かって撃ち鳴らす。届く筈もなく、傷を与えるにも至らず。長旅で痩せ衰えた私の両脚は、ひ弱な身体を支える事も出来ず。自ら地面に跪く。
未だ見ぬ物書きの少女。貴女を探す旅に出て、私は数多く季節の走馬灯の中、新たな人生を歩み続けた。
修道女の姿をした枯れ木。その足下に添えられたリボルバー。その不思議な武器を手にした時、私というモノは紙の上、貴女に描かれた文字列だという事を知った。娼婦として不自由のなかった人生を棄て、愛する人と別れ、想い出に満ちた故郷を飛び出し、闘いと探求の狂想曲へ身を投じたあの時、少女の声、祝福の歌声を確かに聴いた。
そして砂嵐の向こう、色褪せたカーキ色の軍用コートを羽織った若い軍人の姿を見た。哀しげな瞳と物憂げな背中。彼は既にこの世に居ない。でもいつか逢える様な、世界の何処かで形を変えて存在しているような。不思議な予感があった。
いつ会えるだろう。
会えないまま息絶えるかもしれない。
それでも私の心臓は動いている。
そんな事を考えながら、崖の向こう
はるかかなたに見える象牙の塔を眺めていると、
背後から、機関車の汽笛が聞こえた。
旅の続きがはじまった。
せかいは私になにをさせたいのだろう。