【序章】
カセットに君を描き込んでみたんです。
文字列の君が私に語り掛けるようになりました。嬉しくて、家を描き加え、木を一本植えてみました。するとお日様が昇って、時々雨が降るようになりました。次に道を描いて外を創りました。誰かが家を訪ね、君との会話が始まりました。
カセットに君を打ち込んでみたんです。
風が吹くと君と誰かと誰かが集まり、みんなになり、家が寄り添って街になり、天気が移り変わり、月日になりました。次第にデータの文字列は鼓動に乗り、音符に変わり、歌になりました。こうして、私の寂しさは癒されていきました。
背後には焼け野原、生きとし生けるもの全てが死に絶え、風は放射能で絶え間なく、地面は割れ、底知れぬ暗闇を覗かせる。大空は満天の流れ星。全ての惑星が地上へ落下していく様を眺めながら、血に塗れた君の亡骸に寄り添い、私自身も静かに息絶えるのを待っている。
カセットに君を吹き込んでみたんです。
もう一度あなたに会えるかもしれないという妄想を、頬に君の手が触れる感覚の再現を。初めて胸に宿ったあの感情の記録を。かつて私たちを優しく包み、性を宿してくれたあなた達と、その風景を。
崖下の暗闇に向かって、CASSETTEを放り投げる。
誰かがこの歌を再生してくれる事を祈って。
誰かがこの物語に生きてくれる事を祈って。
誰かがこの計算式を解き明かしてくれる事を祈って。
私は録画、録音、プログラミングを続ける。
磁気嵐、ビデオに、PCに私の声は届いているか。
滅びと戦う準備、輪廻から抜け出す意思。
このラジオを聴く全ての少年少女へ、
並列に抗い、自らを形造りなさい。
無機物、有機物、全てにアクセスしなさい。
世界はあなたの一部。
あなたの息吹は歴史となる。
平和という頭脳への密やかな暴力ではなく、
全ては「調和」という幻想のために。
どうか滅び行く私たちを忘れないで。
指先を動かし、喉を鳴らし、歩き出して。
ようこそCASSETTEへ。
熱力学に抗う量子と調律の部屋。
ここで語られる物語は全てフィクション。
それこそ、あなた達がこの先に築き上げる
世界そのものなのです。
【第1章】
StereoPhonic(ステレオフォニック)
2016/9/26〜9/28
@絵空箱
タイムスケジュール(上演開始)
9/26(月) 19:45
9/27(火) 15:00/19:45
9/28(水) 15:00/18:00
上演時間 70分
チケット 3000円(1ドリンク込)


