旦那は騙され易く、これまでキャッチセールスや訪問販売に引っ掛かりそうになった事が何度か有ります。
そんな騙され易い旦那、
会社員の頃に、ある画家先生と知り合いになりました。
その画家先生は難しい人で、何社もの広告代理店に個展の宣伝に関する提案やキャッチコピー案を出させては、全て「うーん」と首を縦に振らないそうです。
どんなに工夫しても提案は通らず金にならないので、撤退した代理店も多かったそうです。
しかし旦那は
「あの画家先生は俺と似てる所がある。だから俺は絶対に気に入られると思う。
今は金を出し渋ってるけど、ああいう人は一旦気に入って認めたら、気持ち良くいくらでも金を出してくれるはずだよ」と言って、画家先生の元にせっせと通っては、無料で様々な提案をし、広告作品を提供しました。
旦那の会社の上司からも
「もうあの画家先生の案件からは手を引きなさい。金にならない」と言われたそうですが、旦那は従わず相変わらず画家先生と付き合い続けました。
旦那はフリーになると、ますます画家先生の仕事(報酬は出ないのに)に力を注ぐようになりました。
ボランティア状態で、画家先生の知り合いの画家の分のプロモーション用DVDまで作らされました。
もはやボランティアというより、奴隷です。
私も画家先生に対して懐疑的でしたが、旦那は聞き入れません。
ある時、旦那が青い顔をして
「俺、訴えられるかもしれない」と言い出しました。
旦那の話はこうです。
画家先生の絵は、時には一千万円など高額で売れる事があるそうです。(この時点で既にあやしい)
あるお金持ちの老婦人が、画家先生の絵を気に入って衝動買いで高額の絵画を購入したそうです。
ところが、その絵の運搬・納品に旦那が駆り出されたそうです。
一千万円もする絵を運ぶなら、普通は運送の保険もかけるしプロに任せるに決まっているのです。
しかし旦那は「画家先生は超ケチだから、運搬や保険に掛かる費用をケチるんだな」と解釈したそうです。
幸いな事に、絵は傷をつける事無く納品する事が出来たそうです。
ところが老婦人が、納品後、何日か経ってから
「よく調べてみたら、こんな絵が一千万円もする訳が無い。詐欺だ!」と怒り出したとの事。
老婦人と画家先生との間で
「返品するから金返せ」「いや無理」と争いになり
老婦人が「訴えます!」と言い出したらしい。
旦那は「老婦人は、俺も画家先生の一味だと認識しているから、どうやら俺も訴えられるらしい」と憔悴しています。
私は旦那に「その流れだと、旦那が訴えられる可能性は低い。あなたも画家先生に騙されているんだから」と慰めました。
幸い旦那が訴えられる事はなく、旦那はようやく画家先生との付き合いにピリオドを打ったようです。
私が話を聞いてゾッとしたのは、間違って絵画に傷をつけてしまっていたら…という場合です。
もしもそんな事になっていたら、画家先生は間違いなく旦那に支払いを迫っていたでしょう。
普通、こんなに奴隷になる前に気が付くと思うんだけど…。