「我々はみんな死んでいる」どうする日銀「74兆円巨額ETF」の末路…爆買いの後始末は売却か政策活 | かじのだんじょん★アメブロ支店

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「我々はみんな死んでいる」どうする日銀「74兆円巨額ETF」の末路…爆買いの後始末は売却か政策活用か

 

日銀が大規模緩和策の一環として買い入れてきた「ETF=上場投資信託」。保有額は24年3月末時点で74兆円にのぼると推計されている。様々な活用論も出ているが、日銀の植田和男総裁は、「少し時間をかけて検討したい」と慎重な発言を残している。市場だけでなく政界も注目する巨額の“埋蔵金”をどう扱っていくべきか。日経新聞の上級論説委員兼編集委員である小平龍四郎氏が解説する。

 

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日銀だけが“静かな巨大株主”であり続けている

4月21日の当欄で筆者は「消える『物言う株主』…株主総会『全議案賛成の個人』が減少!アクティビスト化する一般投資家」というコラムを書いた。今や日本は世界の中でアクティビズムが最も活発な国の1つであり、年金や資産運用会社など伝統的な投資家も企業に厳しく経営改善を迫っている。さらに個人も議決権行使などを通じて経営に物を言うようになっている。すなわち「一億層アクティビスト」であり、逆に言えば物言う株主は特別な存在ではないので言葉として「消える」のではないか――。そんな趣旨だった。

このコラムは市場関係者からかなり大きな反響があり、その多くは賛同だった。しかし、たった1つ鋭い反論があった。それは「日銀を忘れているよ」だ。アクティビストも機関投資家も個人もみんな物を言うようになった株式市場で、日銀だけが静かな巨大株主であり続けている。

 

日銀は包括金融緩和の一環として、2010年に上場投資信託(ETF)の購入を始めた。当初は年4500億円程度だったが、徐々に購入額は膨らみ、いつしか株式市場のメインプレーヤーの1人になった。株価が下がると「日銀のETF買い」の期待が高まり、実際にその通りになるという光景がくり返された。

日銀のETF保有総額は74兆円と巨額に

日銀はETF購入について「リスクプレミアムの圧縮を意図した金融政策」という立場を崩さなかったが、投資家の受け止め方は間違いなく「相場の下支え」、すなわち「人為的な株価維持策(PKO)」だった。

日本経済がデフレから脱却しつつあり、株価もバブル期の最高値を更新した今、金融政策かPKOかはさておき、日銀のETF購入は歴史的な役割を終えた。

10年以上にわたって継続的にETFを購入したため、現在の日銀は株主としての存在感を高めている。2024年3月末時点でのETF保有総額は74兆円。含み益は37兆円といずれも過去最高だ。さらに、ETFを通じて日銀が株式を10%以上保有している企業は70社を超えている。半導体試験装置のアドバンテスト、電子部品のTDK、さらには衣料大手のユニクロなどが有名だ。いずれも経営に大きな問題を抱える企業ではないため弊害は出ていないが、企業統治(コーポレートガバナンス)の面からは問題含みであることは間違いない。

もちろんETFの運用会社は議決権行使をしているはずなので、間接的に企業の大株主になっている日銀を「物言わぬ株主」と言うつもりは毛頭ない。しかし、株式市場全体の潮流が機械的な議決権行使から、エンゲージメント(働きかけ)、さらには株主提案へと、企業への影響力行使を強まる方向に動いていることを考えれば、中央銀行によるETF保有の異質さは際立ってくる。

年間3000億円ペースで株式売却は続いている

日銀の審議委員にはETFの組成や運用に関係する証券グループの出身者が入っており、形式の面から杓子定規に考えると、透明性の面で問題なきにしもあらず。そう指摘する声もかねて聞かれるところだった。

もちろん、日銀にETF保有には無視できない実利もある。ETFからの分配金は今や1兆円超と、保有国債の利息収入に近づきつつある。今後、日銀が利上げを進める局面では、金融機関が積んだ当座預金の大部分にかかる付利を上げるので、その分利払いが膨らむ。この影響を緩和するためにETFの分配員は貴重な原資となる。

穏当に考えれば、金融政策の正常化の一環として、分配金を確保しつつ、株式市場への影響を考えながら、少額ずつETFを売っていく道筋が考えられる。

 

現在でも日銀は株式を売っている。これは、かつて金融システム安定策の一環として銀行から政策保有株を買ったものが対象で、2016年度から当初想定、年間3000億円ペースでの売却が続いている。株式相場が上向いているため、この日銀の売りは相場全体に大きな影響を与えているわけではない。

 

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日銀保有ETFを債権と交換し「有効活用」する案も

この規模でETFも徐々に売っていくとすると、現在の保有時価からの単純計算では240年余りかかる。これでは非現実だと指摘する声が各所から寄せられている。そこで浮上しているのが、日銀保有ETFの「有効活用」だ。

「日銀ETF問題 《最大株主化》の実態とその出口戦略」(2021年3月 中央経済社)の著書もある東京海上アセットマネジメントのチーフストラテジスト、平山賢一氏は「長期成長基金」構想を唱えている。

専門の基金を設立し債券を発行、日銀が保有するETFと交換するスキームだ。基金は現物株に転換し、機械的な議決権公租を超えた積極的なエンゲージメントを展開。それにより日本企業の活性化をはかる。広く経済、金融界から人材を募って当代一流のエンゲージメント集団をつくる。さらに企業から受け取る配当金の一部を研究機関や大学などに拠出するようにすれば、日本経済全体の成長力の底上げもはかれるのではないか――という構想だ。

結果、粛々と超長期に渡って売却していくべき

平山構想の派生形として、日銀ETFを引き取った基金が「第2GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」のような存在となり、株式運用を民間ファンドなどに再委託することにより、「資産運用立国」の中核的な役割を果たすという案も聞いたことがある。

また、個人にETFを割引価格で個人に売却し、家計の株式保有を一気に高めるアイディアを口にする向きもある。これにより「貯蓄から投資へ」を加速させようというわけだ。

いずれにせよ「活用案」は国策に沿ったものであり、時間の経過とともに政治色を帯びるのは確実だ。すでに金融界に対して永田町から原案づくりを非公式に求める動きもあるようだ。

 

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政治との関連もあり、5月9日に日銀が公表した4月25~26日決定会合の「主な意見」は注目された。その中で「保有するETFやJ-REITの取り扱いについても具体的な議論ができる環境になりつつある」との意見のほか、「本行保有ETFの取り扱いを検討するにあたり、その処分方法が株式市場の機能に与える影響や市場に及ぼすインパクトの大きさ等を考慮する必要がある。したがって、簡単な解決策はないが、仮に長い時間がかかっても方向としては残高をゼロにしていくべきである」との指摘があったという。(引用文は5月15日付日本経済新聞より)

すなわち、特別な基金などつくらず、粛々と超長期に渡って日銀が売却していくということだ。先述した「240年」仮説も一気に現実味を帯びる。そんな先の経済や市場の状況は誰も分からず、具体的に反論はできない。

なぜなら、「長期的に我々はみんな死んでいる」(ケインズ)のだから。