新型コロナウイルスの今後の方向性は極めて不確実である。しかし、政府や企業の指導者たちは、単一の予想を期待し続けている。彼らは数週間、数ヶ月、数四半期単位で考える傾向があり、パンデミックや経済危機が何年も長期化すると思っていない。
実際に、多くの人がV字回復を期待している。しかし、世界で最初に景気回復フェーズに入った中国でさえ、景気がV字回復になっていない。公衆衛生当局は、非常に効果的な治療薬やワクチンが見つかるまでは、この伝染力の高いウイルスが、我々の社会に影響と危険をもたらし続けると警告し続けている。
もちろん、これは誰も聞きたくないニュースだ。しかし、不確実性は、国や国際社会が足踏みしている言い訳にはならない。
コロナウイルスのリスクがもたらす可能性について網羅的に考える必要がある。特に最悪の事態を想定することが重要だ。当初、指導者がコロナウイルスの深刻さについて楽観的観測を持っていた、米国、ロシア、ブラジルで、感染者数が急増したことは偶然ではない。
二ヶ月前、コロナウイルスの将来の可能性について、3つのシナリオを作成した。今回は、その3つのシナリオに基づき、さらに世界貿易、サプライチェーン、地政学、その他の影響について調査した。
3つのシナリオ
U字型
1)まず、V字回復の可能性は低いので、U字型回復を最良のシナリオとして想定した。
W字型
2) 次に、 2020年秋までにコロナウイルスの第二波を経験するW字型回復(ジェットコースター型)を想定した。※ジェットコースター型:感染者数の増加と減少を繰り返し、感染者増加率のグラフがジェットコースターのようにアップダウンを繰り返す。
L字型
3)そして最後に、コロナウイルスに対する有効な治療薬やワクチンが開発されないという可能性について考えた。有効な治療薬やワクチンが開発されない場合、世界経済の見通しはL字型の回復になり、何年にもわたってウイルスが絶え間なく蔓延することになるだろう。
私たちの主な発見は、ウイルスがあらゆる局面で影響を及ぼすということである。新しいウイルスに対し回避策はなく、対処するために必要な医学、科学、産業の近道もない。
我々は、利用可能な証拠に基づいて、二つ目のジェットコースターのシナリオに向かって進んでいると評価している。国レベルのリーダーシップと国際的な協調体制の欠如は、ウイルスが勢いを取り戻し、急増し続けることを意味している。これは、人道、経済、政治に至るまで、さまざまな二次的影響をもたらす危険性がある。コロナウイルスの今後の方向性は、脱グローバル化を加速させる可能性が高く、それは、旅行規制や輸出規制の強化を伴い、景気後退を悪化させる。そうなれば、世界各国のナショナリズムはさらに激化し、国際紛争の危険性も高まる。
ジェットコースター型の未来は、今後2年間の長期的な景気回復の見通しを危うくする。それは、国内においても、先進国と開発途上国の間においても、格差を拡大する。最も重要なのは、短期的な不確実性が、より永続的な行動の変化を確固たるものにし、それがソーシャルディスタンスを基本とした新たな社会になるということだ。それは、緊急経済対策が景気刺激策にならないことを意味する。米連邦準備制度理事会のパウエル議長は「長期にわたる景気後退は、経済の生産能力に長期的なダメージを残す可能性がある」と警告している。
2008年の世界金融危機から得られた教訓は、大規模な景気後退が不均等な回復につながり、一部の国では大きな利益を、他の国では大きな損失をもたらすということである。どのような分野に投資し、どのような経済を構築したいかを考える必要がある(政府が最終的に役割を拡大させ、産業や経済部門に直接関与する可能性が高くなるので、特に重要である。)
景気回復に必要な3つのポイント
ジェットコースター型のシナリオで、景気回復を実現するためには3つの重要な要素がある。
1. 継続的なウイルス対策
第一に、ソーシャルディスタンス、広範な検査、濃厚接触者追跡、そして治療薬とワクチン開発によって、ウイルスのアウトブレイクを制御できなければ、経済対策がすべて打ち消されてしまう。しかし、米国や世界の他の国々で、国レベルの取り組みを継続すれば、 将来起こりうる大規模なアウトブレイクに備えることができる。
2. 国際協力
第二に、 世界中の国々と建設的に協力できなければ、パンデミックの際に生じる緊張と分裂を煽るだけでなく、社会的・経済的な復興を抑制する。世界的なパンデミックが多国間主義の衰退の流れを食い止めることを期待するのは無理があるが、他国の経済とサプライチェーンのデカップリングが、新たな正常化への近道であると考えるのは間違っている。
3. 社会の再構築
最後に、連邦政府の対応の不備にもかかわらず、米国は、金融機関、地方自治体、革新的な民間企業、および米国市民のおかげで、不安定化しているわけではない。今こそ、政府、民間、市民社会によるプラグマティズム(実用主義)の時代だ。 このトラウマ的な経験によって弱体化するのではなく、 社会を再構築するために、長期的な計画を策定し、行動すべきである。
