「華麗なるスケート衣装の世界Ⅳ」読み応えありました。面白かった。
スケーター其々が衣装を作品の一部としてその感性や想いを投影させている姿、デザイナーがそれを深堀りしてアイディアを膨らませるところ、いいですねぇ。
衣装を見た自分の感想と種明かし&答え合わせをしている気分にもなり本当に面白い。
特に、かなだいの2022-2023シーズンリズムダンスとフリーダンスを担当した原孟俊さんにはシンパシーを感じつつエンパシーまで発動してしまったあたくしです。
「ほんと、今度飲みませんか?」w
リズムダンス:コンガは初見で「あのドラマっぽい」、とイメージ膨らみました。
マイアミ(コンガはマイアミサウンドマシーンの曲)、80’s、ヴェルサーチとくれば「マイアミバイス」です。ドラマはもう少しダークでスタイリッシュな世界観でしたけどね、コンガの音とテクノポップのリズム。
かなだいからは、マイアミのヤングセレブのダンスシーン感をすごく感じました。
髭たくわえて不審なティンピラじゃないんですーw
そしてなんと言ってもフリーダンス:オペラ座の怪人の衣装裏話。
ここまで楽曲・戯曲の内側に入り込んでから、気づきを外側に発展させる感性凄いなぁと。
そして「アンドリュー・ロイド・ウェバーが作った曲自体が、実は結構ロックっぽい」からの、「ゴシックロック的なテイストが(今回の衣装に)嚙み合うんじゃないか」と。
ポンっっっ!(膝を打つ音)そうなんですよっっ、おっしゃる通り!!!
(ここから深堀ります。映画版オペラ座の怪人大好きなkikiの個人的な思い入れの話です。)
ロイド・ウェバーは元々あの「ジーザス・クライスト・スーパースター」というロック・オペラから有名になっていった作曲家です。
オペラ座の怪人の物語の中で披露される舞台シーンの劇中歌はオペラっぽい曲想になっていますが、他はミュージカル、ロックテイストなんですよね。
かなだいは映画版を音源として使っていて、主役の二人ジェラルド・バトラー&エミー・ロッサムの歌唱力は正直舞台版に比べればだいぶ落ちると思います。特にオペラ座の怪人25周年記念のロンドン公演ラミン・カリムルー版を音源として希望する方も多く、自分もラミン&シエラ版オペラ座は見終わって動けない位感動しました。
が、かなだいフリーの音源は結局、映画版のもので(も)良かったと思う。
実に大輔さんに合っていたので。
映画版は実は1989年には企画が動き出しますが、実際撮影が始まるまで14年ほど頓挫を繰り返しています。当初のキャスティングは舞台と同じマイケル・クロフォードとサラ・ブライトマン。
個人的には映画にはこの配役は向いてないと思う。
映像向きのルックスではないことと、二人とも年を取りすぎている点で。
(実際最終キャスティングではクリスティーヌ役はガストン・ルルーの原作に近い10代の少女を探し始めます。)ファントムは元々右顔面が奇形で醜いですが、マスクで隠れていない左顔面が綺麗でもいいじゃないですか。
一旦頓挫し、二度目の製作時にはジョン・トラボルタが熱望され、アントニオ・バンデラスも候補に挙がります。トラボルタは言わずもがな、バンデラスもサラ・ブライトマンと歌で共演経験がありかなり歌える俳優です。
結局、監督降板の為、再び頓挫。この時点で舞台人より映画スターの存在感にシフトしているのが分かります。
2002年に製作再開、すでに売れっ子作曲家となっているロイド・ウェバーが映画化権を個人で買い取り自費も投資。
キャスティングにはヒュー・ジャックマンが候補に。彼は「ヴァン・ヘルシング」シリーズの主演で多忙だった為実現せず、ジェラルド・バトラーがここで候補に挙がります。
ロイド・ウェバーは「ややロックンロールの素質がある人が欲しかった」そうです。
「ファントムはやや粗く、やや危険で、従来の歌手とは違う。クリスティーヌは怪人の危険な魅力に惹かれるのだ」と。
バトラーに歌の経験値はありません。学生時代にロックバンドのヴォーカルをやったことがある程度。
それでも4度のヴォーカル・レッスンを受けただけでロイド・ウェバーの前で『The Music of the Night 』を歌い、役を射止めます。
このエピソードを知る前は、配役は製作者側が決めたのだろうけどよくロイド・ウェバーが承知したな、、と思ってたのですが、実はロイド・ウェバー自身が選んでたんですね。
主題曲「Overture」などロックバンドが演奏してもかっこいいと思いましたよ。
あのパイプオルガンのアルペジオっぽい裏メロのところはエイトビートでドラムのハイハットの役割も果たしてますし、主題のメロディはディストーションを効かせたギターでもハマりそう。
そして、バトラーが歌う『The Music of the Night 』はもうロッカバラードですもん。
撮影まで1年以上を歌のレッスンに費やしていたそうでかなり上手くなってますが、声楽家のそれではないですよね。(因みにラミン・カリムルーは独学)声質がもうロックっぽくてコールドプレイにちょっと似てる。
ラウル役の俳優さんに暗に(俺の方が上手いやん)と揶揄されたこともあった記憶があります。
私的にはバトラー歌唱のこの曲は、ジャーニーの「Open Arms」やボン・ジョヴィの「Always」と同じカテゴリーに入れたい(笑)。
そして、「映画上で」あの歌声と仮面を付けたあのルックス(実際私たちがスクリーンで見せられるファントムは凄いイケメンです)に惹かれるクリスティーヌは、音楽の天使や亡き父の幻に引きつけられるというより普通に、仕事が出来て危ない大人の男に惚れかかってるうぶな女子、に見えて共感してしまう。
ロイド・ウェバーがオーディションで拘った「ファントムはやや粗く、やや危険で、従来の歌手とは違う。クリスティーヌは怪人の危険な魅力に惹かれるのだ」の部分。
「傲慢で危険な性格」という意味だけじゃない、”ヤバさ”
舞台のファントムとは趣が少し違うんですよね。
怪人の内面は憤りや怒りだけではなく、愛を欲し孤独で壊れそうな心をも持った哀しい人間です。
それがバトラーのルックスと、あの声楽的な色合いが薄いからこその、揺らぎのあるロックテイストのヴォーカルを以て演じると、なんとミステリアスでセクシーであることか。
大輔さんのファントムは、このジェラルドファントムの雰囲気を実に拾っていると思うのです。
己の人生に苦悩ししつつも傲慢で、クリスティーヌに愛されたくてひねくれて、、
バトラーはそれでも危うくてセクシーなんですよ。
大輔さんのファントムもただただ切なくて危うくて美しい。
このヤバさは映画版ファントムにこそ強く感じられる部分で。
バトラーのヴォーカルがぴったりハマって滑る姿は、あのヴォーカルさえも切ない音色と捉えて、大輔流の感性でスケート表現に変換させているように自分には見えて
「なんだこいつ・・・おかしいだろ・・ヤバすぎだろ・・・」とずーっと思っていました。
でも共感はされないだろうなぁ、、とこれまで言ったことなかったんですけどね。
だから
(他の音源だったら違う表現になっていたかも?しれません。)
つらつら書きましたが、クリスティーヌには一時アン・ハサウェイも候補に挙がったんですよね。
やはりスケジュールが合わず、エミー・ロッサムの直前には当時既にアイドル的な人気があった歌手(名前忘れた)も有力候補でしたが、エミーの方が透明感がありオペラの基礎もあるので抜擢された感じでしょうか。
エミーは当時17歳くらいで役にはぴったりだったと思います。
哉中ちゃんのクリスティーヌは女神でしたね。
ファントムの苦悩を理解し、恐れもありつつ哀れみと恋愛感情もあって揺れている感じが出ていました。
そしてなんと言っても溢れる慈愛。
ダイアゴナルステップでは音楽を通して心が通い合っている感じ、ラストの別れ、原作よりは少し大人なクリスティーヌでしたが、そこが実に良かった。
苦しみつつ手を放した大輔が、救われる感じがしたなぁ。
氷上の凄い女優でしたよ。
世界選手権が終わった後、フロリダのMatterhornfitさんが上げてくれたインスタリール。
オペラ座の怪人ロンドン公演のオリジナルキャスト、マイケル・クロフォードさんのヴォーカルを使用しています。(ピアノ伴奏で声もだいぶ落ち着いた感があるので舞台版じゃないですね。)
MADムービーとしてはこのヴォーカル最高。
泣かずに観られない。
でも歌声はgentleなおじ様っぽくて、フリーダンスの大輔ファントムとは溶け合いにくいかも。
言いたかったこと、こんな感じかな。