2022年世界選手権 村元高橋組:競技者としての怒涛の2年を数字で読む。ちゃんと検証する。 | A skater's soul ~髙橋大輔応援ブログ~

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フィギュアスケーターを愛してます。
中でも、別格なのは ”高橋大輔”

2022年フィギュアスケート世界選手権が終了しました。

アイスダンサーになった二人の、初めての世界選手権は16位でした。お疲れ様。

力を出し切れず本人達は悔しかったでしょう。

今シーズン本当に走って走って、プログラムに食らいついた二人の努力の成果を見届けることが出来たのは良かった。

 

2020年2月に渡米、間もなくコロナによるリンクの閉鎖・帰国、その後フロリダに戻るも大輔さんが肋骨に受傷、哉中ちゃんの脳震盪、と怪我続きで9月にやっとRDの振付開始、とトラブル続きの2020年でした。

2021年、やっとコーチの元でみっちりと練習を積めるようになり、ダンス技術の習得と並行し、頑強な躯体と強靭な筋肉の増築にも励みました。

初心者だとて容赦ないレベルのエレメンツの指導に食らいつき追い込んだ、修行僧のようなこの1年と数か月。

すごく頑張りましたよね。

素晴らしい2プロをありがとう。

 

高橋大輔はパフォーマーとして既に活躍しており、かなだいを数値で評価するのはなんとも無粋で、そことはかけ離れたところに本質的な存在価値はあるのだけど、

彼らの選んだ今の主ステージが競技の場である以上、自分はきっちり検証しておきたい。

 

 

【点数と総合順位】

RD67.77 FD96.48 合計」164.25 総合順位16位

本人達が悔しいのは知っています。目指したのは10位以内。

自己ベスト190.16から25点も低い点数でした。

今回はかなり厳しめのジャッジでFDではPBを更新した組も2組しかおらず、他大会と比較してもベースで5~10点くらい低い印象です。

RD、FDとも大きなミスをしたのでこの順位は仕方ないですが、

それでも二つの失敗があっても16位というのはかなりびっくり。

場数の少なさからくる大舞台での失敗と考えると、いかにポテンシャルがあるのか、逆説的に教えられました。

 

【世界ランキング】

今季単年度のシーズンランキングでかなだいは15位。

世界ランキングだと27位です。

世界ランキングは、当年ポイントの100%前年ポイントの100%前々年ポイントの70%の合計で計算されますが、かなだいには前年、前々年のランキングポイントがありません。

(国際大会参加が今シーズンからなので)

それでも、両方とも既に国内他選手を大きく引き離しトップに踊り出ています。

2012-2022シーズンランキング

2022世界ランキング

 

【キャリア年数から見る】

世界フィギュアでも伸びしろに期待 村元哉中、高橋大輔ペアの成長がもっと見たい

こちらの記事から引用しますが、

かなだいを上回った上位15組の内

結成10年以上・・・9組

結成5年以上・・・・6組

  内5組がそれぞれ別パートナーとジュニア時代から活躍

「結成2季目にして16位という結果は十分に称賛されるべき内容と言える。」

 

 

「高橋大輔がアイスダンスにもたらすもの」

これは自分なりに考え、以前も書いてみたことがあります。

元世界王者であり、日本初の殆どのタイトルを持つ有名人気選手が挑戦することによる

アイスダンスへの注目・視聴の拡大と、活性化、新規参入選手への期待

高橋の稀有な表現力が、アイスダンスの表現世界に

これまでと趣の違う新しくユニークなスタイルや感情表現を現わしていくこと

これはほぼメリルとズエワコーチの受け売りですが、今季のリズムダンスの荒々しさ力強さ、フリーダンスのまるでバレエの舞台を見ているような柔らかい美しさで既に示されたのではないかと思っています。

 

これにプラスして、

③日本記録の更新とチャンピオンシップのメダル獲得

が加わりましたね。かなだいなら有り得ることでも、実際にシーズンが進むまで現実的に思い浮かびませんでした。

 

 

パフォーマーの細胞が人型でえへへとしているみたいな大輔さんですが、アスリートの闘争本能もがっつりあるのは分かっています。

今季はそれが甦っていました。

今回は何故、点数が伸びなかったのか、どんな採点傾向だったのか。

 

【リズムダンスの減点項目】

一番痛かったのは大輔さんのセカンドツイズルの失敗。

男性はレベル1さえ取れず、レベルB(Basic)となりました。

レベルBは滅多にお目にかかれないので「ええもん見してもろた」じゃなくて、レアなもの見ましたよ。

実は今回ミッドナイトブルースのキーポイントが一つも取れないカップルもいて、他にレベルBはありました。

ラジョワー・ラガ組がそうです(珍しい、彼らは世界ジュニア王者です)、あとはスケアメの小松原組もそうでしたね。

キーポイントのレベル獲得ミスはパッと見失敗に見えないのでGOEもちゃんとついていますが、ツイズルは失敗バレバレですのでGOEはマイナス。これまで8点位は取れていたのに今回は僅か3.39点でした。

アイスダンスは、他カテゴリーのようにレベルの違いに比例したGOE係数の段階差はありません。

現シーズンの採点表だと「レベル1~4」は同じGOE係数、「レベルB」のみ単独で更に低いGOE係数になります。

レベルが取れていなくてもトップ選手に高得点が出るのはこの為です。

 

ところで、かなだいのツイズルですが三つのツイズルの種類は下記のとおりです。

1)  RFI (右足フォアインサイドエッジ)左回転5回

2)  LBO(左足バックアウトサイドエッジ)右回転4回

3) LBI(左足バックインサイドエッジ)左回転3回

右利きの場合、ジャンプもスピンも左回転なので、どのスケーターにとっても右回転は難しいと思われます。

大輔さんんもこの2つ目を苦手としていますが、これは利き足ではない左足で、バックでエントリーするので余計に大変なようですね。

回転軸が外側に振られるのでバランスも取り辛いと思われます。

因みにパイポーはかなだいと全く同じパターン。

パパシゼ、ハベドノ他モントリオール組は

1) RFI    左回転

2)  RFO 右回転

3)  RBO 左回転

シニカツは 3) 2) 1)の逆順で同じパターン、全部利き足の右足で回っています。

レベルに影響するのは

・異なるエッジでの2方向回転

・回転数

・グループ別の動作の工夫

なので軸足変えない方が楽ではないのか???と素人は思いますが、これもズエワコーチの指導者としての矜持みたいなものなんですかね、、、

(美しさとか難易度とか、出来るんだからやれ的な虎の穴的な)

 

【フリーダンスの減点項目】

四大陸選手権が終わってから見栄え良く変更したローテショナルリフトが全部回転しきれず、3回転した辺りで途中でほどけてしまいました。

大輔さんは軌道を失敗したと言ってた?無理にやり通すと女性を落とすことにも繋がるので途中で降ろしたのは大事な判断だったのかもしれないです。

ポジション取れず回転数も足りず、レベルB再び(笑)(笑うとこなのか?)でGOEマイナスとなり、他試合で6点位は取れていたところ0.94点となり5点ほど失っています。

後はツイズルで珍しく哉中ちゃんにミスがありました。

速報で男女共レベル3だったのが最終レベル4になっていましたが、何しろGOEが渋く0.11しかついていない。

この二つで既に7点くらい失ってます。

最初のダンススピンがとても良かったのでこのままいくか?と思われましたが、やはりリフト、ツイズルで点数を積み損ねてしまいました。

これが影響してか、優雅な演目とは云え演技に迫力がなくなってしまった感じがしました。

当然、PCSにも影響しますよね。

 

RDでは実は4大陸選手権よりPCSは出ています。

FDも技術点がかなり下がった割にはPCSは下がっていません。

 

下の表は、RDの技術点(TES)(青文字)を高い順でソートをかけたものですが、かなだいはRDは15位でしたがTESのみで見ると最下位になってしまいます。

それ位、ひとつのミスが与える影響は大きいです。

 

同じように下記の表でRDのPCS(赤文字)で点数の高い順でソートをかけると、かなだいは12位になるのです。

エレメンツの失敗で失われた点数は大きかったですが、PCSではちゃんと評価されています。

ミスが無く、整った演技をしていたらPCSのスケーティングスキルや演技の部分は更に点数が伸びたと思われます。

FDで同じ検証をすると、TESは18位、PCSは14位となります。

P/Tで表示している小数点以下の数字ですが、技術点TESに対するPCSの割合を表しています。

かなだいのRD、FDの数字が突出して高いのが分かります(笑)

これは技術点に比べるとPCSが凄く出ている、という事です。

スケーティング・芸術面の上手さはちゃんと評価されてるんですよ。

ジェイソン・ブラウンのパターンですなぁ。

今回はミスが大きすぎたのでこうなったのであって、ミスが無ければ他の組と大差なくなりますけどね。

フィアー・ギブソンなどは実はPCS割合が低めなので、自分の印象と違ってスケーティングや演技よりも技術面のアグレッシブさ評価されているのが分かります。

パパシゼの数字が低めに出るのは、TESもPCSもほぼ上限まで出し尽くしていて比較が機能しないからですね。

もはや天上人。

 

今季ガチでスコアを表に落としてきて気付きましたが、ワールドが一番点数出さない感じです。

約30組くらい出場するので、下位のカップルには本当に点が出ない。

本当に上手いカップルはちゃんと評価してくれますが、中位・下位はそこそこ、な印象です。

更にグランプリシリーズ、チャレンジャーシリーズと大会のレベルが下に行くほど点数は出やすい感じがします。

その大会の表彰台に乗るレベルの選手は評価されやすいんですよね、だって「大会の顔」であり「格」になりますから。

でも、GS・CS共にISU公認の国際大会ですので、貰った点数と順位は当然誇って良いと思います。

そして、点数より順位、なんですね。アイスダンスは。

ジャンプひとつで順位ひっくり返るシングルとは違って、同じ大会に勢ぞろいしたところで序列決めするんですなぁ。

 

今回かなだいがRD、FD共に大きなミスを犯さず、N杯ワルシャワ杯のようにクリーンな演技をしていたら、、、

RDではツイズル、ミッドラインステップで失った5~6点、連動して若干下げられたであろうPCSで1点を想定加算すると74点辺り。

FDではローテーショナルリフト、ツイズルで失った6~7点、連動して下がったPCSで2~3点ほど(Factor係数と過去試合の数字を鑑みて)を加算すると105~6点辺り。

総合で11位くらいの順位にはなっていたかもしれないですね。

 

 

本人達の言うように圧倒的に経験値が足りないのが大きな試合で出たのでしょう。

しかしスケーティングスキル・芸術面では評価されていることは分かりました。

大きなミスありで16位になれたことがポテンシャルの高さも証明しています。

過去に日本のアイスダンサーが出来なかったことを短期間でやり遂げたことに変わりはないです。

 

来季の去就についてはまだ発表されていません。

本業のパフォーマーとして生きるにしても時間は無限じゃありません。

彼らが決定したことはまるっと応援します。

それでも、、

この2季・1年と数か月で(2年ではないのです、哉中ちゃんもちゃんとした練習は1年位しか出来ていない、と)

大輔さんがアイスダンサーになる物語は出来上がったと思います。

そしてここからは、、

かなだいが世界のトップダンサーへと飛躍していく第2章が始まると思うのですよ。。。。。

 

 

 

 

一旦終了です。疲労困憊。

スターズオンアイスの「白ソーランくそヤバい」とかそういうの(どういうの?)記事書きたかった(笑)