2004年の創立以来、東京コミュニティスクールの学びは進化してきました。今年もテーマ学習に新しいテーマが登場しますし、国語や算数そして体育など学びの方法も改善されていますし、今後も現状に甘んじることなく成長し続けることでしょう。

しかし、そのようにダイナミックに変化する一方で、本質的な概念は変わらぬばかりか、今まで以上にその輝きを増しているかのように感じます。

「自分らしさを活かし、人や社会や自然との和(つながり)を楽しみ、ともに学び着実に成長する」という意味を持つ「自和自和(じわじわ)」という理念。そしてTCSが育む人材像の中心概念である「学び続ける力」。子どもたちが日々の生活の中で向き合わなければならない「自分を大切にする、ひとを大切にする、ものを大切にする」という3つの約束。そのいずれもが、子どもたちが困難や失敗を乗り越えて成長し、未知の世界を生き抜く力を学び・育むための原理原則となっていることを実感しています。

そんな中で、今まで適切な言葉がなかったためにうまく伝えられなかったTCSの教育観を表す新たな言葉に出会い、思わず快哉を叫びました。

その概念は「レジリエンス(Resilience)」と言います。

レジリエンスという言葉は、様々な分野で少しずつ違った意味で使われていますが、大凡「システム、企業、個人が極度の状況変化に直面したとき、基本的な目的と健全性を維持する能力」と定義できます。誤解を恐れずに平易な言葉にすれば、「死ににくい」「壊れにくい」「立ち直りやすい」能力だと言えます。

学ぶということは、自分の知らないことやできないことに直面し、その困難を乗り越え、失敗を糧に成長することの繰り返しです。一度覚えたことを忘れ、それを思い出すことは単純なる復元でしかありませんが、学ぶことの本質は元の状態よりも成長した新しい状態になることですから「創造的な復元力」にあると言えます。それはまさに、筋肉に負荷をかけることで筋力を高めることや、あるいは脳へのストレスによって傷ついたニューロンがその修復メカニズムの働きによって元の状態より強くなる「ストレス免疫」という現象と同じような、生態の基本的なパラダイムなのです。

困難や失敗というのは人生におけるストレスです。しかし成長のためにそれが不可欠な要素である以上、教師や親は、子どもたちがそのようなストレスから逃れるための手立てをするのではなく、困難や失敗を歓迎し、そこから創造的に復元していく子どもたちの学習体験を支援し、賞賛していくことが大切なのです。

TCSの子どもたちはいろいろな失敗をします。困難に凹むときもあります。他者の価値観とのギャップに悩むこともあるでしょう。しかし、その全てが生き抜く力としての「レジリエンス(創造的な復元力)」を獲得するための大切な学びの機会であることを、この言葉に出会って改めて認識することができました。

“I haven't failed. I've found 10000 ways that don't work. ”という発明王、トーマス・エジソンの言葉があります。彼は周りから見ると失敗に見えるものも、全て学びの素、成功の糧にしていました。まさに「レジリエンス(創造的な復元力)」を備えた人物だったと言えるでしょう。

エジソンのように、TCSの子どもたちが明るい未来を創造するときが来ることを今から心待ちにしています。