スタートの号砲が鳴り響き、私は笑顔で歓声の中を走り始めました。(前回からの続き)

初マラソンの目標は「4時間以内」「走りきる(歩かない)」の2つ。

そして、初マラソンに向けて立てた戦略は「行けるところまで行く!」

もちろんうまくペース配分をして後半にも力を残していくことが大切なのは百も承知なのですが、一方で、生まれて初めての距離なのですから、「適切な」ペースなど想像もつきません。かえって体力を余らせてゴールして、「もう少し速く走れば良かった」と後悔するよりも、とりあえず自分の限界を知ることの方が今後につながるはずだと考えました。

スタートからしばらくは大混雑でしたが、駐車場からスタート地点までの走りで十分に身体は暖まっていましたので、うまくすり抜けながらすこしずつ前に上がっていきます。最初の1kmこそ5分30秒/km、さらに上り勾配の次の1kmでも5分10秒/kmかかりましたが、そこから20kmは4分30秒/km平均で軽快に走ることができていました。

ハーフ(21.0975km)の通過はネットタイム(自分がスタートラインを超えてからのタイム)で1時間38分22秒ですから、上出来のペースでした。

しかし、ハーフを超えたあたりから足の重さを感じ始めます。ちょうどそのタイミングで、河口湖から西湖へと上る心臓破りの坂が立ちはだかります。昔から上り勾配を走るのは得意で、下見のときも、ここはごぼう抜きポイントになるかもとほくそ笑んでいたのですが、ハーフを走った後の身体には相当きつく、一気にペースが5分30秒/kmに落ちてしまいました。

とは言え、そこで体力を使い果たした感じになったわけでもなく、上りきって西湖湖畔の平坦な道に戻ってからは再度ペースアップできる余裕があるはずでした。ただ、自分が気づかないうちに限界が近づいていたのでしょう。そこから2kmは5分/kmまでしかペースが上がらず、25kmを過ぎたあたりで、明らかに足の重さが数倍になった感覚がありました。

それでも、27km地点までは必死になって5分/kmペースを維持するために、歯を食いしばって走りましたが、もう既に限界は超えていました。実質的に私らしい走りができたのは25kmまでなので、所謂「30kmの壁」が、私には25km地点で訪れたと言えるでしょう。

そこから先は、ただ「歩かないぞ!」という気力だけでした。
幸いにして、痛みはどこにも出てきませんでしたので、気力さえ続けば走りきれるぞと、自分自身に言い聞かせながら走りました。ただ、足はウォーキング時に装着している3.5kgのウエイトをつけて走っているのではないかと思うほどの重さで、前に一歩踏み出すことさえも必死でした。

西湖湖畔から河口湖に戻る道のりは気が遠くなるほどの時間がかかったように思います。何せ歩いているランナーを抜かす以外は、ひたすら後ろから来るランナーに抜かされ続けるのですから。

それでも36km付近までは何とか5分30秒/kmペース前後で踏ん張ったものの、そこから先は一気にペースが6分/km~6分30秒/kmまで落ちました。そして、その横をどんどん人が私を追い抜かしていく・・・。生まれてこのかた長距離でこんなに人に抜かされた経験は初めてで、「かけっこ」での人生最大の屈辱感に苛まれつつも、とにかくそのときはゴールまで走り続けるんだという一念で、ひたすら前を見て走り続けます。

残り2kmの地点で、妻と次男のKOSEIが応援してくれているのを発見しました。そこからゴール近くまで、KOSEIが応援しながら伴走してくれたおかげで、涙がこぼれそうになりながらも気力は途切れず、無事にフィニッシュラインに到達しました。

記録は、3時間39分45秒。

無事に目標の4時間を切ることができました。ネットタイム(自分がスタートラインを越えてからゴールまでの時間)は3時間37分39秒。初マラソンとしては上出来だとは思っています。また幸いにして、筋肉痛と疲労以外は何も身体に異常はありませんでした。

しかし、自分の限界が思ったよりも早く来てしまったこと、そして限界を超えてから、あれほどまでに思い通りに身体が動かないことの驚きは、「では、どうすればいいのか?」という強烈な問いになって脳裏から離れません。

新たな目標そして課題がおぼろげに見えてきた、初マラソンでした。(続く)