青椒肉絲(チンジャオロース)にトラウマがあった。
いや、トラウマってほどでもないけれど、
作りたくない料理のかなり上位に入るのは間違いなかった。
昔、付き合っていた人が中華料理が好きで、
中でも青椒肉絲が好物だった。
市販の中華料理の素を使って青椒肉絲を初めて作ったら、
「少なすぎる」と言われた。
説明には2~3人前って書いていたから、
大丈夫だと思っていたのに。
わたしはそんなに食べていないのに。
後日、どのくらいの量ならいいのだろうと試したことがある。
倍量でもダメで、3倍の6人前でやっとOKが出た。
彼だけで5人前を食べる計算になる。
材料を切るだけでもかなり時間がかかるし、
炒めるフライパンも重くて泣きそうになった覚えがある。
何より、中華料理の素を買うだけで
予算がオーバーするのが悲しかった。
その頃は今よりもずっと貧乏だったから。
結婚してから何度か、青椒肉絲を作った。
自分でタレを作ったこともあったけれど、
思ったよりも美味しく感じられなくて、
市販の素に頼ることにしていた。量は作らないことにして。
先日、料理のアプリで青椒肉絲が表示された。
画面をタップして見てみると、かつて作ったタレよりも
ずっと少ない調味料で作れるみたいだった。
これなら、家にある調味料で作れる。
家族が増えて食べる量が増えたので、
今回は6人前くらいの量を作ってみた。
昔よりもフライパンが大きくなったけれど、重さは変わらなかった。
皿に山盛りにしてテーブルに出す。
ほとんど味見しないで作るので、
食卓に出してから作った味がわかる。
うん、今回は美味しい。
家族にも好評だし、これからはこの味でいこう。
わたしは青椒肉絲を克服した。材料を切る手間は減らないけれど。