怖さはあります。でも見終わったあとに残るのは恐怖よりも悲しさでした。

『We Bury the Dead』は、ザック・ヒルディッチ監督、デイジー・リドリー主演の作品で、壊滅的な軍事実験のあと、タスマニアで行方不明になった夫を探すために、遺体回収班に加わる女性アヴァを描いています。死者が再び動き始めるという設定だけを見ると、かなり典型的な終末ホラーに見えます。

でも実際に見てみると、この映画の中心にあるのは単純な恐怖ではありませんでした。私には、これは「別れを受け入れられない人の心」を描いた映画に見えました。だからこそ、ただのゾンビ映画として片づけるには少しもったいない作品だと思いました。

静けさの使い方が印象に残る

この映画でまず良かったのは、空気の作り方です。派手に怖がらせ続けるのではなく、静けさをかなり大事にしています。人のいない場所、止まったような時間、すでに壊れてしまった世界の気配。その積み重ねが強くて、見ている側にもじわじわ不安が広がってきます。

ホラーではありますが、怖さの種類は大きな音や急な驚きだけではありません。むしろ、「もう終わったはずのことが終わっていない」という感覚のほうが、この映画ではずっと不気味でした。

アヴァの存在が物語を支えている

デイジー・リドリーの演技もとても良かったです。アヴァは強い人物ではありますが、無敵のヒロインという感じではありません。疲れ、迷い、執着、その全部を抱えたまま前に進んでいるように見えました。私はそこに説得力を感じました。頑張っているというより、止まれないから進んでいる。その感じがこの映画の痛さにつながっています。

そのため、物語がホラーの形を取りながらも、感情の芯がぶれませんでした。

少し惜しかったところ

一方で、見ていて「もっと変わった方向にも行けたのでは」と感じる場面もありました。映画はときどき、とても不穏で独特な作品になりそうな気配を出します。けれど最終的には、やや見慣れたジャンル展開に戻るところもあります。そこは少し惜しかったです。もう少し踏み込んでいたら、さらに忘れにくい作品になった気がします。

見終わったあと

それでも私はこの映画をかなり好意的に受け止めました。スピード感だけで押す映画ではなく、喪失の重さを静かに残していく作品だからです。怖い場面よりも、悲しみが消えずに残る感覚のほうが印象に残りました。『We Bury the Dead』は、死者そのものより、残された人の心のほうがずっと怖くて切ないことを見せてくれる映画でした。

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