お仕事が終わった昼下がりのことでした。

ぽかぽかと顔に当たる日差しがあたたかく、

ヒューと向かい風が前髪をあげて、おでこを全部出した

開放感が清清しかったので、

すこし寄り道してみることにしたのです。

そこは、いつも通っている街で、

仕事でなくっても、小さな頃からお母さんに連れられて

歩くことが多かったところ。

懐かしさと新しさが入り混じったその街は

久々の春の日差しにウキウキと喜んでいるように見えます。

ヒューと一陣の風が吹きました。

気持ちよくたなびいた前髪につられて、

晴れ上がった青空を見上げると、

ぷっくりと膨らんできた桜のつぼみをみることができました。

正真、証明 春が近づいてきているのです。

待ち行く人の顔も、心なしかうれしそう。

そんな街の今まで通ったことのない道に

さしかかり、ふと横を見ると

見慣れない、でも知っている光景がありました。

好奇心にかられて1歩足を踏み込んでみると、

そう。イタリアにきていたのです。

イタリアのベネチアではありませんか。

春のまやかしがみせた幻想かと思いましたが、

イタリアの人々がしているように、

そこではオープンテラスに気持ちよさそうに
珈琲を飲んでいる人々が実際に、いたのでした。

こんな東京のまんなかにベネチアがあるなんて。

水路沿いに歩いていくと、
行き止まりの美容室の前には

「ベネチア広場」とイタリア語で書かれています。

奥から、先ほど入ってきた入り口を振り返ってみても、

この中に入ってしまえば、東京の街は見えません。

小春日和の昼下がりに、ステキな魔法にかかったような、
ぽっかりと静かでなんだかおかしみのあるそんな時間でした。

ちなみにこのベネチアはもう20年前からあるそうです。
自由が丘に訪れた際は、ちょこっとだけ
イタリア旅行をしてみたらいかがでしょう?

おとぎの世界に足を踏み入れられたような
そんな気持ちになれること請け合いです。