書家 清水恵エッセイ『 ときどき書心 』 vol.141
三岸節子という洋画家をご存知ですか?女子美の学生だった17歳で三岸好太郎という天才洋画家と知り合い20歳で結婚。3人の子どもを設けますが、好太郎は10年後の31歳で夭折。そののち節子は3人の子どもを抱えながら洋画家として立ちました。その節子の生誕120年の特別展が愛知県一宮市にある三岸節子記念美術館で開かれ、見に行ってきました。実は節子ファンの私です。節子の靱性、洋画への情熱は多くの著名人によって讃えられてきましたが、その燃えるような情熱の陰に節子の柔らかく繊細な感性を今回展で強く感じずにいられませんでした。色彩が画面上に正しく収まっているかどうかというバルールの見事さもさることながら、節子が時折、作品に表出する桃色の豊満さに魅せられての感覚。太陽や炎、体内に燃え滾る血のような赤を乳色すなわち乳白色で溶かし合わせた温もりを放つかの桃色。そこにこそ節子の本来を見る思いがします。節子の柔らかな心の感触に3人の子の母としての母性を抜きにはできない気がしたのです。