インテリア書の専門店

インテリア書の専門店

明治神宮前のモジギャラリーでは、インテリア書道・墨アートの作品販売のほか、額装(表装)も承ります

中学3年のときに数学を教わった先生のこと

が忘れられず。けっこう高齢のおじいちゃん

先生で。でも実際は60代のはず。中学生の子

どもにはおじいちゃんに見えただけ。

そのおじいちゃん先生は「文字」を「もじ」

ではなくて「もんじ」と言うのでした。

「『もんじ』はきちんと書かないといかん」

そのたびに友だちと授業中もクスクス笑って

いたものです。

「時代劇に出てくる武士でも『モンジ』とは

言わないよねえ」

てな具合で、先生のあだ名は当然のことなが

ら「モンジ」。子どもは残酷なものです。

今時のスマホでも「もんじ」って入力すれば

「文字」の漢字が先頭に出てくるのに、誰も

「もんじ」とは発音しない。

「文字」自体はどっちで読まれたいと思って

る? やっぱり「もんじ」のほうが断然格調

高いよね。

60代になってみて日本語の格調やら美しさ

やらを改めて思い直す私ここにあり。

でも「文字」を「もんじ」とは言えない私。

今年の「歌会始」の歌に選ばれた中に、宮崎

県延岡市の16歳高校生、森山文結(ふゆ)さんの歌

があって話題になりました。

今年のお題は「夢」。毎年お題が出されて、そ

れを歌の中に用いて詠むのがきまり。

16000首あまりの応募があった中から選ばれ

た森山さんの歌は、

  ペンだこにうすく墨汁染み込ませ掠れた

  夢といふ字を見てる

「歌会始」は、今時にしては応募方法が古風

で、半紙に筆書き。私も筆を生業としている

者として毎年応募だけはしています。

半紙をヨコ半分に折ってタテ書き。右側にお

題と自作の歌を書きます。左半分には住所や

年齢、職業等を書き入れます。

ですから記入の際に、墨汁がペンだこに染み

たのでしょう。応募状況がわかりませんとな

かなか理解しづらいところかもしれません。

「夢といふ字」というのは、きっと最初に書

かれたお題の「夢」の字ですね。

旧仮名遣いで「といふ」としたところに、墨

の柔らかな香りさえ感じます。

戦後、「書」も西洋アートと肩を並べようと、

書家たちが情熱を燃やした時期がありました。

日展に「書」が第五科として参加したのが昭

和28年。そのころは「書」も芸術(アート)だというの

でさまざまな試みがなされました。

同じころ篠田桃紅さんも、全盛期を迎えたア

メリカ抽象表現主義の活動と相まって、ニュ

ーヨークで出品されたり書芸術の海外展開に

貢献されていました。桃紅さんは独自の世界

を築かれましたが、その肩書きはある時期か

ら美術家。ここに複雑な思いを抱きます。「書」

芸術(アート)足りえなかったというのでしょうか?

たとえば「書」が日展に参加しようという過

去においても、その名称をどうするかの論議

があり、さすがに「習字」という候補はなく

も、「書道」「書芸」「書」のいずれがよいかで

当時の書家たちはかなり悩みました。

西洋アートに肩を並べようとした「書」ではあ

りましたが、そもそもそこに見当違いがあ

った? と思う今日このごろの「書」の低迷。

今思えば西洋アートとは異なる独自(オリジナル)性を追求

すべきだったのかもしれません。

最近、NHKの朝ドラの再放送がお昼の時間

に定着してしまいましたね。

今は『カムカムエヴリバディ』。上白石萌音さ

ん演ずる最初のヒロイン安子が生きた岡山を

舞台にしてドラマが始まります。

岡山は江戸時代の綿の栽培に始まり、その綿

を用いる小倉織や真田紐づくりが発達し、繊

維産業盛んな土地として知られるようになっ

たと言われます。

明治、大正時代にかけては、足袋や学生服、

軍服を生産する産地となり、安子の嫁ぎ先も

そうした繊維業を営む大家でありました。

とりわけ昨今では、倉敷市児島地区はデニム、

ジーンズの産地として超有名になっています。

デニムは縦に色糸、横に白糸を使った綾織り

の生地。今では日常に欠かせないファッショ

ンのひとつとして愛されて。

そのデニムの(おり)を書で表現してみたのですが、

いかがでしょう? ざっくり感が出ているか

しら? 2枚重ねの作品で下紙に太めの横糸

をあしらい、上紙に墨で色糸を載せての作。

タイトルは「デニム(織)」で、どう?

 

 

3月5日からSho・p展こと、清水恵の教室

展が始まります。ここ数年、会員みんなで和

紙作家・坂本直昭さんの和紙を作品マットに

使わせていただいております。

坂本さんの創作和紙は魅力溢れる芸術和紙。

何が一番の魅力? って、坂本さんの和紙

を使うと作品の魅力が倍増すること。それで、

「ああ、また坂本さんに助けてもらった」と

いう結果になりつつも満足がいく。

これは坂本さんの和紙を使うさまざまな作家

さんが皆さんおっしゃること。

とりわけ書作品にはよく似合いますよ。

新潟、北海道、高知と何カ所も工房をお持ち

の坂本さん、和紙漉きの全行程をすべてお一人

でこなしていらっしゃるというお話。

「それはアーティストの我儘」と思いつつ、

自作にとってベストな1枚を選ぶことで、和

紙1枚1枚に籠められた坂本さんの魂を受け

止めることが叶うような不可思議な気分。

芸術魂って人に伝わってこそ深まるものでは

なかろうかと。北斎を目指されるという坂本

さん。まだまだ10年以上のご活躍を期待。