「今回は、こいつか」
「それにしても、ここはローカルだなぁ」
茨城空港で、私は不満を漏らしていた。
タラップまで外を歩いていくなど、考えても見なかったからだ。
そして、行き先は神戸空港。
70分程のフライトだ。
私の経験なら、その辺のコンビニに行く様なものである。
もちろん、離陸は順調。
快適で安全なフライトをするのが、私の職務であり最低限の義務である。
そして、それ以上のサービスをしてこそプロフェッショナルと言えるが、
それについて私は少し不満を持っていた。
これが、今この機体で出来る精一杯のフライトであり、
これ以上の快適さを提供するには限界があるからだ。
不満の原因は、それだけではない。
こんなちっぽけな機を、自分に押し付けてきた会社への不満である。
私の経験値なら、ジャンボだってB29だっていけるはずだ。
もちろん、自分でもわかっている。
こんな性格が災いして、上層部から毛嫌いされているのは。
神戸空港に着くと、早速搭乗口はごった返していた。
183便は、そのまま次の地に向け準備をしている。
むろん、自分の仕事はここまでで、その先どこに向かおうが関心もなかった。
明日のフライトまで、しばしの休暇を楽しむだけだ。
早々とチェックインを済ませ、
クラウンプラザホテルの最上階にあるレストランに来ていた。
神戸の街並みが一望出来るここは、私のお気に入りの場所だ。
こうして眺めていると、自然と元気が湧き上がり、やる気を起こさせてくれる。
ここ神戸は震災からすでに16年が経ち、震災の傷跡などみじんも感じられない。
見事復興を遂げ、活気を取り戻した神戸。
そんな神戸の姿に、改めて自分ももっとがんばらねばと奮い立たされたのだ。