3日間の福岡への出張中、作業も佳境となったところへ
社用の携帯にかかった見知らぬ番号からの電話をとると
相手は文芸系の出版社の営業担当(おばさま)だった。

広島の書店を回りたいという作家がいて、
ぜひ会ってほしいとのこと。
聞けば、いまベストセラーになっている文庫の
売れっ子作家である。

つい先月も、私のいちばん大好きな作家さんが
会いにきてくださったばかり。
すぐに侍マンに報告の電話をした。




今の店にきたのは半年とすこし前。
晴れて侍マンのもとで修行する身となった私は、
彼の自由さと放任主義に温かく包まれて、すくすくと
経験を肥やしている(つもり)。

好きにやってください
危ないと思ったら止めますから

という彼の最初の指示をありがたく真に受けて、
自分のやりたかったことを細々と試している。

やりたかったこと、つまりウロコ時代の想い…
言わばウロコの実写版のような売場をつくること。

嬉しいことに、それが実り成果となっている今である。

常連のお客様から
「最近、本の売り場が変わりましたね
すごく楽しませてもらってます」
とのお言葉を頂いたときの嬉しさは感慨もの。
そのお客様の声を嬉しそうに報告してくれるスタッフが
いることにも感謝である。




今回の福岡への出張では奇しくも兄やんと日程が重なり
久しぶりに作業をともにした。

兄やんのもとから離れて1年。
売場のでき具合にテンションが上がったり下がったり
する書店員としての兄やんを、そうそうこの感じ!と
ニヤニヤしながら懐かしさに浸る私なのだった。


帰りの新幹線でも同じ便の隣同士で座り、語り合い、
ハッとする。

聞き覚えがある。いや?全く同じなのである。
話す内容も、言い方も、話す順序も、補足の仕方も。
私がスタッフや、新しくできた後輩に話すのと同じ。
そうだった。書店員の私はこの人でできている。

向かう先の景色が、すこし鮮やかになった気持ちで
出張を終える。




前回の作家さんの来訪のあと、侍マンは
「次は誰を呼ぶんですか?」とクールに言うので
なんだよその言い方、とふてくされていたら、
スタッフが教えてくれた。
「あれ、店長の誉め言葉なんですよ」と。



広島(日常)に戻るのがいやだなぁと思っていたところに
私が広島にいる理由を見つけてくれたみたいな電話に
また、感謝である。


過ぎた半年が早かったのかは分からない。
目まぐるしかったのは本当である。

まさかの異動を言い渡されてから4ヶ月。
それからは未踏の地を、足元を確かめるひまもなく
綱渡りのように走り抜けてきたように思う。
実際は走り“抜け”られているのか分からないけど。



4ヶ月前、兄やんの隣の席を去ったときのことは、
今でもはっきり思い出せる。

そこは私の定位置、指定席だと思っていたのにと、
しばらくは不貞腐れていたっけ。

当の兄やんは、もともと3人分の仕事を抱えてた上に
抜けた私の2人分くらいの仕事が乗っかったために
多忙の渦に飲み込まれて本当に見えなくなってしまった。
電話が繋がると、奇跡だと思うほど。


勝手のきかない初めての中規模の店舗の仕事は、
難航もいいところで、私はいまだに初心者のよう。

開店時間が早いため、5時台に家を出ている。
この時期、まだ暗い朝に見える星だけが私の味方。



いじけていたつもりはないけど、毎晩のようにひとり
飲み歩いていた様子を、Facebookで見ていた兄やんが
「前田、おまえ大丈夫か?」
とたまたま一緒になった飲み会で聞いてきた。
え、なにが?とすっとぼけてみせた次の瞬間の

「逃げてるでしょ」

の一言に、せきを切ったように涙が溢れてきて、
言った本人もあたふたするくらいの泣きっぷりである。

私をただの飲んべえだと思って微笑ましく見ている
周りの皆の中で、自分さえ気づかない(ふりをしていた)
“逃げ”を、兄やんは見抜いて直球を投げてくる。


やっぱり私はこの人とまた肩を並べて働くために、
この店を乗り越えないといけない、と思ったのは、
まんまと乗せられてしまったということなのか。

飲みにいく回数は少し減った最近である。
でもまだちょっとは逃げている。



そうそう、この半年の間についに30歳を迎えた。
オリンピックでたくさんの若い人たちが頑張っていて
それを見るまたたくさんの人たちが勇気をもらっている
ことでしょう。

30歳を若いと言っていいのなら、助太刀会も含め、
私たち若い世代が、盛り上げていけばいいのでは、と
少し心に風を通してみる。

どうしてそうなったかは思い出せずに、
お好み焼き週間は明日が最後の1日となった。


月曜日から毎日ちがうお好み焼き屋さんに、ひとりで
立ち寄っている。

写真をFBにあげてレポートしているわけでもない。
とにかく思いつきで始まってしまったから、目的もなく
とはいえ、お好み焼きは世界で一番好きな食べ物なので
幸せな一週間だったとおもう。
仕事がたまっていることを除いては。
お好み焼き屋は、閉店時間が早いのである。


このへんで釈明をしておくと、このお好み焼き週間、
ビールを始め、お酒は一切として飲んでいない。

純粋にお好み焼き、なかでも肉玉そばだけをただ
食べ歩いていたのである。


この食べ歩きレポートは、特にどうする予定もなく、
迷惑なことに助太刀会通信として配信されることに
なるのだろう。


助太刀会もメンバーが7人に増え、この秋にそろそろ
集合をかけようかと思っていたところ。

ツレないみんなが、どれだけ反応してくれるか。

来週からのダイアリー戦争を前に、私の楽しみは
それくらいしかないのだ。
30歳まであと3ヶ月半。