海外で始まった新婚生活。
聞こえは良いけれど、それほど楽ではなかった。
まず、英語圏ではなかったこと。
日本では、結婚や引越しなどで、事前に勉強することもできなかった。
それでも、「英語は通じるだろう」と高をくくっていたのが、間違いだった。
スーパーやパン屋も英語が通じない。
いや、通じているのに返してくる言葉は現地の言葉。
そして、私はその言葉を理解できないから、会話が成り立たない。
その上、ビザの手続き・運転免許証・新居探しもしなければならない。
そんな感じで、始めの数か月は、あっと言う間に過ぎていった。
しばらくして、私も語学学校に通い始め、話をする相手も出来た。
ところが、学期の半ばで体調を崩してしまった。
病院に行くと、肺炎になりかけてるから、2週間は家で安静に…と。
週5日あるクラス。2週間も休むと、どうにもついていけない。
おまけに、復帰の1週間後に進級テストがあったが、先生から「受けなくていいと思う」と言われる。
こうなると、やる気を完全に無くしてしまい、放棄。
せっかくクラスで仲良くなった人とも縁を切ってしまった。
それでも、幸運だったことが1つ。
新居のお隣さんが、とても良い人たちだったこと。
夫婦+娘Kちゃん(生後4ヶ月)家族で、英語で話をしてくれるし、とても親切にしてくれる。
Kちゃんも、とても愛嬌が良く、私を見るたびに声を出して笑ってくれる。
今までに経験のないストレスで、狂いそうだった私を救ってくれたのはこの家族だった。
週に1回は必ず、お茶に誘ってくれ、生活情報などを教えてくれる。
Kちゃんは、いつも愛嬌が良く、成長を見るのが本当に楽しい。
そして、この国に来て8ヶ月が経った時。
お隣さんから、ある提案を頂いた。
「週に1、2回、数時間で良いので娘を預かってくれないか?」
要するに、ベビーシッターである。
これは私にとって、とても都合の良いオファーだった。
なぜなら、私のビザは【配偶者ビザ】のため、働くことが出来ない。
働こうと思ったら、私の労働ビザを取ってくれる会社を探さなければならない。
しかし、そんな会社を見つけられる確立は限りなく0%に近い。
その国の言葉も話せず、高卒の外国人を誰が雇うと言うのか?
奇跡的にそんな会社を見つけても、【雇用】と【ビザの発給】は別問題である。
失業率の問題を抱えているこの国。移民局が、ビザを発行するわけがない。
とにかく、そんな私に賃金も払ってくれる、と言うのだ!
既に色々と助けてもらっているのに、更に仕事まで…涙が出そうだった。
とりあえず、最初の1ヶ月はお試し期間とし、無償でやらせてもらう事にして、
Kちゃんが大丈夫そうであれば、お給料は“お小遣い程度”という、格安料金で決めた。
そんな感じで1年目を向かえ、前途は明るく見えた。
が、不妊症が発覚したのは、この数か月後だったのである。
つづく