監督:フェデリコ・フェリーニ

脚本:フェデリコ・フェリーニ、トニーノ・グエッラ

撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ

音楽:ニーノ・ロータ

出演:ブルーノ・ザニン、マガリ・ノエル、プペラ・マッジオ、アルマンド・ブランチャ、ジュゼッペ・イアニグロ、ナンド・オルフェイ、チッチョ・イングラシア、ステファノ・プロイエッティ

原題:Amarcord

1973年/イタリア、フランス/124分

公式サイト

評価:★★★★★★★★★☆

 

1930年代のイタリアの田舎町を舞台に、フェリーニが思春期の思い出をコミカルに綴った自伝的な作品。タイトルのアマルコルドというのは、彼が生まれたロマーニャ地方の方言a m'arcôrdが元になっていて、私は思い出すという意味ですね。


本作には一貫したストーリーらしきものはなく、妄想や噂話なども交えたショート・エピソードの繋ぎ合わせみたいな感じの作品で、私が高校生の時に観た時はそんなに面白いとは思わず、キネ旬ベストテンの1位に選ばれたのも意外に思ったものでした。だけど、この歳になってあらためて観てみると、ノスタルジックでユーモラスで最高の面白さでしたね。


心をざわつかせる役者たちのエキセントリックな演技と、その合間に流れる耳に心地良いニーノ・ロータのテーマ曲との緩急をつけた演出が素晴らしく、いつまでも観ていたくて、終わってしまうのが惜しかった。でも、やはり高校生の時の私のように、どうやら本作の面白さが分からなかった人もいたようで、途中で帰ってしまった若者もいましたね。彼は、もう少し我慢して見ていれば、私が若い頃に観て一番印象に残った、太っちょおばさんのオッパイも見れたんだけど、まことに残念なことをしたものです。(笑)


本作で次に印象に残っていたのは、ボートで豪華客船を見に行って涙を流すシーンだったけど、昔はなぜ泣いているのかがよく分からなかったものだった。だけど、どうやらこの船は、当時大西洋横断世界最速を記録したこともあるレックス号で、言ってみればイタリアの誇り。ファシスト時代のイタリアでは、日本人が戦艦大和を見て感激するような、国民のナショナリズムを高揚させる存在だったのかな。


ファシストによるコミュニストの弾圧シーンも、昔はあんまり意味が分かっていなかったように思うけど、今ではそんな時代背景も手に取るように分かるし、若い頃に本作を観てそんなに面白いと思えなかったのは、単に自分が無知なだけだったからなのかも知れませんね。