監督、脚本:ルル・ワン

撮影:アンナ・フランケスカ・ソラーノ

音楽:アレックス・ウェストン

出演:オークワフィナ、チャオ・シュウチェン、ツィ・マー、ダイアナ・リン、ルー・ホン、チャン・ヨンポー、チェン・ハン、水原碧衣、リー・シャン、チャン・チン、ヤン・シュエチェン

原題:The Farewell

中題:别告诉她

2019年/アメリカ、中国/100分

公式サイト

評価:★★★★★★★☆☆☆


今年のゴールデングローブ賞で、オークワフィナがアジア系としては史上初めて主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)を受賞した作品。初めに、嘘に基づいた話というタイトルが出るんだけど、一応6才の時に中国からアメリカに移住した監督の実体験に基づいた話のようで、アメリカと中国の文化の違いをテーマに、なかなか興味深い作品になっていましたね。


幼いときから自分を可愛がってくれていた祖母が末期の肺がんということを聞いて、中国に戻ることになるんだけど、中国では本人には癌であることを告知しないのが普通。それで、日本で暮らしている従兄弟の結婚式ということを口実に親戚一同が集まるんだけど、アメリカでは告知するのが当たり前なので、そうして祖母に嘘をついていることに耐えられずに悩むという話。


日本でも癌を告知するかどうかというのは、結構議論になるところだけど、最近は癌であることを告白する有名人なども多いし、日本はだんだんアメリカナイズされてきて告知する方が普通になって来ているのかも知れませんね。日本でも昔は告知しない方が多かったと思うし、私の父親が36年前に癌で亡くなった時も、本人が自分で気づくまで知らせなかったものだった。ちなみに、私は当時は東京に住んでいたんだけど、余命3ヶ月と聞かされた時にはどんな顔をして父親に会いに行ったら良いか分からず、本作の主人公のように戸惑ったものでしたね。


主演女優賞を受賞したオークワフィナは、父親が中国系、母親が韓国系のアメリカ人ラッパーだけど、演技的には普通に思えたかな。受賞できたのは、多様性の時代を象徴するような作品全体の力だったかも知れませんね。


日本人妻の役を演じた水原碧衣というのは、日本ではほとんど無名だと思うけど、主に中国で活躍している京大出身の女優さんだそうで、本作のおかげでひょっとしたら世界で一番有名な日本人女優になったかも?


この監督はまだ30代のようだけど、出てくる歌が『やさしく歌って』『竹田の子守唄』『ウィズアウト・ユー』など、70年代初頭に流行った曲が多かったのは親の影響でしょうかね。さすがに今の日本人の若者は、結婚式で『竹田の子守唄』なんて歌わないだろうなあと突っ込みたくはなったけど、個人的には懐かしくて結構楽しめました。『ウイズアウト・ユー』の中国語バージョンも、なかなか乙なものでしたね。