監督、脚本:クリスティアン・ムンジウ
撮影:トゥードル・ヴラディミール・パンドゥ ル
出演:アドリアン・ティティエニ、マリア・ドラグシ、ラレス・アンドリーチ、リア・ブグナール、マリナ・マノヴィーチ、ヴラド・イヴァノフ、ペトレ・チウボタール、ジェル・コルチェアーグ
原題:Bacalaureat
英題:Graduation
2016年/ルーマニア、フランス、ベルギー/128分
公式サイト
評価:★★★★★★★★☆☆

 

ルーマニアン・ニューウェーブの旗手、クリスティアン・ムンジウ監督作品ですね。ルーマニア映画というと、世界映画史においては10年前まで全く無名の存在だったわけだけど、2007年のカンヌ映画祭で、ムンジウ監督の長編2作目に当たる『4ヶ月、3週と2日』が、世界各国のそうそうたる巨匠たちの作品を抑えてパルム・ドールを受賞し、一躍注目を浴びることになったわけです。今年のWBCで旋風を起こしているイスラエルみたいなものですかね。(笑)


その後、2013年のベルリン映画祭でも、カリン・ピーター・ネッツァー監督の『私の、息子』が金熊賞を受賞し、ルーマニアン・ニューウェーブなどという言葉も生まれつつある昨今。まあ、ルーマニアというのは人口2千万人にも満たない小国なので、さらに3人4人と続く人が出て来るかどうかは分からないけれど、ネオレアリズモの流れを汲むような正統派の作品群は見応え十分で、すっかり商業主義に流されてしまっている経済先進国=文化衰退国の作品などとはひと味違う輝きを保っていますね。
 
本作も、娘を溺愛するあまり不正に手を染めてしまうことになる父親の気持ちを描いた作品だけど、その背景にはルーマニア社会の閉塞感があり、リアルに胸に突き刺さってくるものがありました。過度な説明を排したミステリアスな演出も巧みで終始緊張感があり、時間を忘れて見入ってしまいましたね。

中途半端な感じを受けるラストには賛否両論がありそうだけど、結末はさして重要でもないので、好き勝手に想像してくれということかも知れません。そうすることによってメインテーマが浮き彫りになって、深く考えさせられる作品になっていたんじゃないかと思いました。

 

 

 

 

汚れなき祈り [DVD] 汚れなき祈り [DVD]
5,184円
Amazon

 

 

 

私の、息子 [DVD] 私の、息子 [DVD]
4,104円
Amazon