母と子(1938)

監督：渋谷実

原作：矢田津世子「秋扇」

脚色：柳井隆雄

撮影：杉本正二郎

録音：土橋武夫、金谷常三郎

美術：江坂實

音楽：堀内敬三

出演：田中絹代、吉川満子、佐分利信、河村黎吉、徳大寺伸、水戸光子、松井潤子、斎藤達雄、葛城文子、青野清、高松栄子、松尾千鶴子、関かほる、大河三鈴、南部耕作、中尾兼徳、仲英之助、河原侃二、懸秀介、宮島健一、磯野秋雄、川名輝、葉山正雄

1938年/日本/89分・モノクロ

この前年に監督デビューを果たした渋谷実監督の出世作で、キネ旬ベストテンの第３位に入りました。当代きっての美人作家、矢田津世子の短編小説を映画化した女性映画で、年を取って旦那に顧みられなくなった妾とその娘との情愛を通じて、男の身勝手さを描いたメロドラマですね。

原作者の矢田津世子は、坂口安吾の恋人だったことでも知られていますが、この６年後３７歳の若さで結核のため亡くなってしまいました。

母娘役を演じた吉川満子と田中絹代は、実際にはわずか８歳しか違わないけど、吉川の方は２５歳のデビュー当時から老け役を務めていて、母親役がすっかり板についている感じですね。でも、田中絹代の方は当時２８歳で、２１歳の娘役を演ずるには多少無理があるような気がしました。

相手役の佐分利信は、上原謙、佐野周二と共に松竹三羽烏と呼ばれた二枚目俳優だけど、ここでは意気地なしで打算的な現代青年を演じています。