悪魔のように細心に


監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ

製作:マルセル・ヴァンダル、シャルル・ドゥラック

原作:シャルル・ヴィルドラック(戯曲)

脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ、シャルル・ヴィルドラック

撮影:ウィリー、ニコラ・エイエ、アルマン・ティラール、クリスチャン・マトラ

編集:マルト・ポンサン

セット:ジャック・クロース

音楽:ジャン・ヴィーネ

出演:アルベール・プレジャン、マリー・グローリー、ユベール・プレリエ、ピエール・ローレル、マディー・ベリー、ニタ・アルヴァレス、ジャンヌ・デュック、ジャンヌ・ビレル

原題:Le paquebot Tenacity

1934年/フランス/85分・モノクロ


この当時、日本ではジュリアン・デュヴィヴィエの監督作品は異常なほどの人気があったようで、1934年度のキネ旬ベストテンでは、本作が第1位、『にんじん』が第3位に入っています。ちなみに、この年は『会議は踊る』が第2位、『或る夜の出来事』が第5位、『街の灯』が第10位タイで、今観るとそれらの作品と比べて本作が特に優れているような気はしないんだけど、深刻な不況の中で軍国主義化が進んでいた当時の日本では、絵空事のようなアメリカ映画などよりも、人生を考えさせられるデュヴィヴィエ作品などの方が好まれたのかも知れませんね。

でも、この作品は主演のアルベール・プレジャンの陽気さのせいで、あまり深刻さが感じられず、やや中途半端な印象ですかね。プレジャンは、『巴里の屋根の下』でお馴染みの歌える俳優で、この映画の中でも酒場で歌うシーンがあり、その後マダムに、「プレジャンより上手いわね。」と言われるギャグなんかも出て来ます。


内容は、パリでは不況で仕事もないため、プレジャン演ずる主人公は友達を説得して一緒にカナダに出稼ぎに行くことに決めたんだけど、カナダ行きの船テナシチー号が故障したため、港で2週間ほど足止めを食ってしまうことになります。その間に、宿の女中との間に三角関係の恋が生まれ、その影響で3人の人生がガラリと変わってしまうという話で、ほんのわずかな運命のいたずらが人生を大きく変えることもあるという哲学的な内容の物語でした。