悪魔のように細心に

監督:ジャン・ヴィゴ

製作:ジャック・ルイ・ヌネーズ

脚本:ジャン・ギネ、アルベール・リエラ、ジャン・ヴィゴ

撮影:ボリス・カウフマン

編集:ルイ・シャヴァンス

美術:フランシス・ジュルダン

音楽:モーリス・ジョベール

出演:ミシェル・シモン、ディタ・パルロ、ジャン・ダステ、ジル・マルガリティス、ルイ・ルフェーヴル、モーリス・ジル、ラファエル・ディリジャン

原題:L'atalante

1934年/フランス/89分・モノクロ


29歳の若さでこの世を去った天才ジャン・ヴィゴの残した唯一の長編で、遺作となった作品。彼はその前衛性ゆえに生前は全く評価されず、前作の『新学期・操行ゼロ』は上映禁止になり、本作もより一般受けするようにということで、65分にカットされて公開されたそうです。


戦後、フランソワ・トリュフォーによってその才能を見出され、ようやく世界的に高く評価されるようになったものの、この作品のオリジナル・フィルムは散逸していて見つからず、長らく幻の名作とされていました。後に発見されたネガを元に、ほぼオリジナルに近い形に復元されたのは1990年のことで、この映画が日本で初めて一般公開されたのも、製作から半世紀以上も経った1991年のことでした。


アタラント号というのは、セーヌ川を海岸からパリまで往復しているはしけの名前で、その船長の青年と新妻とのラヴ・ストーリーをユーモアを交えて描いたもの。老乗組員を演じたミシェル・シモンが良い味を出していたけど、話自体は平凡で、今観るとそれほどの傑作でもないように思えてしまいます。


でも、それは当時としては画期的な表現を用いたものの、その後多くの作家に模倣されるようになったため、今では普通に見えるということかも知れませんね。特に青年が水の中で彼女の幻想を見るシュールな表現などは、当時としては珍しかったんじゃないでしょうか?なお、このシーンは、後にエミール・クストリッツァが、カンヌ映画祭のパルム・ドールを受賞した『アンダーグラウンド』の中で借用して、リスペクトしています。


アタラント号

¥3,591