悪魔のように細心に


監督:クラレンス・ブラウン

製作:クラレンス・ブラウン、ポール・バーン、アーヴィング・タルバーグ

原作:ユージン・オニール

脚本:フランシス・マリオン

撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ

編集:ヒュー・ウィン

録音:ダグラス・シアラー

美術:セドリック・ギボンズ

衣装デザイン:エイドリアン

出演:グレタ・ガルボ、チャールズ・ビックフォード、ジョージ・F・マリオン、マリー・ドレスラー、ジェームズ・T・マック、リー・フェルプス

原題:Anna Christie

1930年/アメリカ/89分・モノクロ


グレタ・ガルボのトーキー第1作。ハリウッドではトーキーになって、サイレント時代のイメージとのギャップに多くの俳優が姿を消す中、ガルボはその声の魅力でますます人気が増したと言われています。その第一声、「ウィスキーをちょうだい、ジンジャーエールを添えて。ケチんないでよ。"Give me a whiskey, ginger ale on the side, and don't be stingy, baby."」は、名セリフとして有名になっているほどですね。スウェーデン訛りの英語も、本作ではスウェーデン生まれの娘という役柄なので全く問題なし。と言うか、ガルボに合わせて脚本をそういう設定にしたのかも知れませんね。


原作は、後のノーベル賞作家ユージン・オニールの戯曲で、ブロードウェイでの初演は1922年。翌23年に映画化され、同年には日本でも、溝口健二がこれを原作とした『霧の港』という作品を撮っています。本作はハリウッドでは2度目の映画化で、第3回アカデミー賞で、監督、女優、撮影賞の3部門にノミネートされました。それから、この翌年にはやはりグレタ・ガルボが出演してドイツ語版も作られていますね。


ストーリーは、小さな荷船で暮らしている船長が、昔なじみの老娼婦と再会して一緒に暮らし始めようとしていた矢先、5歳の時から親戚の農園に預けっ放しにしていた一人娘が、成人して15年ぶりに会いにやってきます。けれども、娘には船乗りは辞めてビルの管理人をやっていると嘘をついていたほどで、娼婦と同棲しているのが知れるなんてもっての外。それを察して老娼婦は出ていくんだけど、看護婦をやっていると思っていた娘の方も、実は従兄に乱暴されて農園を飛び出し娼婦になっていました。それを父親に隠して一緒に船の上で生活しているうちに、屈強の青年船員と出会い恋におち、結婚まで申し込まれるようになって苦悩するというお話です。


戯曲が原作ということで、ほとんど会話だけで物語は進んで行くんだけど、やはり登場人物の演技のぶつかり合いが見どころですね。ガルボのセクシーなハスキーボイスは娼婦上がりの娘の役にはピッタリで、ガルボはこの作品をトーキー第1作に選んだのが良かったように思います。それから、父親役のジョージ・F・マリオンは、ブロードウェイの舞台でも1923年のサイレント版でも同じ役を務めているはまり役だし、この翌年にアカデミー女優賞を受賞することになるマリー・ドレスラーの酔っ払い演技も印象深かったです。

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