今は子育てが忙しすぎてオケには所属していないのだが、色んな人がちょこちょこ声をかけて下さるので、色んなアマオケの演奏会にエキストラとして弾かせてもらう機会が多い。
 
どこのオケにも属さずに、声がかかるまま東へ西へ - いわゆる“流しのトラさん”となって3年ほどが経つが、一人では弾けない曲(要するにオケ曲)を弾くことができるありがたさに感謝する反面、辛さもある。特にアマオケの場合、オケの実力に雲泥の差があり、エキストラが入ってやっと曲が成り立つような団体は多い。人数が足りない普段の練習はさぞかし大変だろうと思う。そんな中にぽいっと入って、数回の練習を経てすぐに本番。
 
初回の練習参加は特につらい。毎週練習を重ねて来たであろう正式メンバーの隣に座ってとりあえず弾いてはみるが、合わない。どうも噛み合わない。
 
恐らくその居心地の悪さの原因はいろいろあるのだと思うが、その根底にはやはり「エキストラです」という私の遠慮があるような気がする。毎週練習を重ねて、「弾けない」ながらもこの曲と格闘してきたメンバーの人たちに対して、あんまり練習してないのにぽっと来ちゃって何だかスミマセン、という気がどうしてもぬぐえないのだと思う。
 
というわけで今回のワーグナーの「タンホイザー」は、せめて一通り練習してから初回の練習に臨もうと思う。
 
何回か演ったことがあるこの曲だが、この最後の部分はとても苦労する。弦楽器群全体の技量と管楽器のボリューム、あとは指揮者の振り方で弾き易さが全く変わる。前回エキストラで演った時は悲惨だった。ゲネプロ時でも弦楽器が崩壊しまくりで、いったい誰に合わせればいいのか泣きそうだった思い出がある。本番ではプロの先生方が何人か入って下さったようなので、何とか持ちこたえた。
 
皮肉なことに聴衆は、この部分では朗々とした金管のメロディーの方に心奪われているはずで、裏でこの「模様」のような音符を必死で弾いている弦楽器の音は通り抜ける風のようにしか聞こえていない。
しかしたかが「模様」、されど「模様」なのだ。せめて自分が納得いくように弾かないと。エキストラです、すみませんという気持ちではいかんのだ。