今日は朝から次男のチェロレッスンの日。楽器を担いでえんやこら。電車を乗り継いで小一時間である。
ヴァイオリンなら「自分の楽器は自分で持ちなさい!」となるのだが、チェロはそうもいかない。分数楽器とは言え、小学生が背負って階段を上り降りしたり電車に乗ったりするのは至難の技。あちこちにぶつけるし、転んだりしたら目も当てられない。

だからチェロは私が運ぶ。レッスンの日は私にとっては苦役の日なのだ。帰宅したら体はバッキバキである。
だが当の次男はレッスンの前日からウキウキワクワク。何故ならば一時間のレッスンのあと、外食ができるからなのだった。
 
レッスンの場所である先生のお宅は、昔なつかし駅前商店街を通り抜けたところにある。
 
商店街とは本当に誘惑の多い魅力的な場所だ。駅前すぐのにぎやかなところには、おしゃれなカフェを並設したパン屋さんがある。ライ麦を使ったどっしりとしたドイツ風のパンや、バリっと固そうな長いバケットがウインドウ越しに見えて「お、ここはパリ?」なんて勘違いさせてくれるのが楽しい。しかしその隣ではたこ焼き屋の屋台の前で行列している人々がいるのだが。
 
駅からどんどん離れるにしたがって、ちょっと昭和な香りが漂い始める。
ひなびた本屋さん、カウンターだけのラーメン屋さん、揚げ物がいい匂いをたてるホカ弁のお店。店先に大きな樽をいくつも並べているお漬け物専門店。軒下でおじいちゃんがゆっくり里芋の皮を剥いて水にさらしている八百屋さん。「コロッケ」と大きく書かれた看板の下に長い行列ができているお肉屋さん。家族連れにも一人暮らしにも優しい商店街だ。
 
商店街を3分も下っていくと、ディープさはどんどん増していく。「本場の味」と火の出るような文字で書かれたメニューが飾ってあるインド・ネパール料理屋さん。ナンを焼く良い匂いが漂ってくる。シャッターが開いているのを一度も見たことがないひなびた焼鳥屋さん。夜だけ営業しているのだろう。オムライスや豚の生姜焼き定食などのサンプルをショーケースに出している喫茶店には、地元民らしきお一人さま男性がいっぱいで、みんなタバコをスパスパ。ギョロっとした目の南アジア系の青年が店番をしているエスニック食材屋さん。いつかここでバスマティライスを買ってみようと思っている。
 
さて肝心のチェロレッスンだが、次男もだいぶ音が良くなってきた。「楽器を鳴らす」という感覚がつかめてきたようだ。
今練習しているのは春のミニコンサートで弾くブレヴァルのチェロソナタ。去年の秋にコンクールに出た時の曲がゴルターマンのチェロコンチェルト4番だったから、難易度的には3段階も4段階も戻ったことになる。曲をいただいた時は「??」と思ったが(というか、次男が自分で「これ弾きたい」と選んだのだが)、結果的にはこれで良かったような気がする。ムリムリなテクニックを駆使しなくても気持ちよく弾けるし、暗譜も楽。それらのことに気を取られなくなったからこそ、楽器と、自分の音そのものに意識を集中することができるのだ。
「だいぶ安定してきたなあ。この次はまた難しい曲に戻るからね」と先生に言われながら、レッスン終了。
 
そして待望の(?)ランチタイムである。
これまで二人でこの界隈のいろんなお店をたずねた。詳しい話はまた今度。
本日はやっすーいチェーンの食堂で、パジャマのまま家から出てきたようなヨレヨレしたおじさんたちに囲まれながら、味噌煮込みうどん定食(私)とカツカレー(次男)。


 
ごちそうさまでした。案の定、あまり美味しくなかったです(笑)。