心に注目して映画を観たら
なにが見えてくるかな?
Presented by やまなか たかえ
けあトーク 心理カウンセラー
オフィサー・アンド・スパイ
オフィサー・アンド・スパイ - 検索 画像 (bing.com)
STORY ストーリー
19世紀にフランスで実際に起きた冤罪事件を基にした小説の映画化。
仏陸軍のドレフュス大尉が、スパイの容疑で有罪となり投獄された。
ところが、ある堅実な中佐の調査により、ドレフュスは無罪であることが判明した。
中佐は、真犯人も突き止めており、ドレフュスの釈放を主張していた。
しかし、陸軍上層部の圧力によって妨害されてしまう。
その間も、ユダヤ人であるドレフュスは牢獄で不当な扱いを受けていた。
中佐は、自分の信念を貫くため、ドレフュスの釈放と無罪判決(軍籍の復活)をかけて政府を相手に立ち向かうのだが…
POINT 心理学ポイント
【反ユダヤ主義】
「最も長い歴史をもつ嫌悪」と呼ばれていて、
その歴史は、紀元前(キリスト誕生前)から既に始まっているそうです。
【嫌われる理由】
年代毎に「民族的・宗教的・人種的」の三つに大別されています。
概してみると…
ユダヤ人(ユダヤ教徒)は、他民族を敵視して交流を拒み、自分達のみ神に認められているという「選民思想」が根底にあるため、他民族から反感を買いやすいようです。
ユダヤ人側にも他宗教や他民族を否定する姿勢があったことがうかがえます。
また、独自のユニークな戒律を厳格に守る少数民族であるため、他民族からは異質な存在で、民族間の壁は高そうです。
加えて、教育に重きを置いており古代から識字率が高く、有能な人材を多く抱えています。
それがまた、他民族から妬まれる要因だそうです。
キリスト教以降は、「キリスト殺しの裏切り者」という立場におかれたため、ヨーロッパのほぼ全土(キリスト教圏)を敵に回すことになりました。
参照:
反ユダヤ主義の歴史: 原始教会時代から1400年まで | ホロコースト百科事典 (ushmm.org)
【歴史】ユダヤ人が嫌われたわけは?迫害・差別された5つの理由|キートンの"キリスト教講座" (keaton511.com)
迫害が生じる心理メカニズムを、
4つの理論で掘り下げていきます
1.偏見の「ABC」モデル
3つの要素が相互に影響しあい、迫害が生じます。
「A」=情緒的要素
(Affective component)
対象に対して抱く感情のことです。
ユダヤ人に関しては、ネガティブに偏った描写が世代を越えて受け継がれてきました。
「ユダヤ人は、キリスト殺しの悪魔で、性悪で不誠実、信用ならない民族。他民族を敵視して友好関係は結ばず、自分達の能力が高いから他民族を見下している」
ユダヤ人と実際に話したことがない人々も、この刷り込みによりユダヤ人に対する憎悪を抱くようになります。
「B」=行動的要素
(Behavioral component)
のけ者、いじめ、差別的待遇などにより、精神的・肉体的に苦痛を与えます。
「C」=認知的要素
(Cognitive component)
私たちは、知覚する世界を理解しやすくするために分類化します。
例)西洋人、アジア人
分類化により、ステレオタイプが生成されます。
例)日本人は眼鏡をかけてカメラを持ってる、ヘラヘラにこにこ「yes」と答えて主張しない
ユダヤ人においては、「卑しくて、いかがわしいビジネスをする利己的な人々」という強固なステレオタイプがあります。
一度ステレオタイプを持つと、それと合致する事実のみを収集し「やっぱりね」を積み重ねていくため、覆すことは難しくなります。
「ステレオタイプは信じない・偏見はない」と意識する者でも、もし差別することが公正とされる状況におかれた場合、ステレオタイプに基づき行動するのだそうです。
「偏見のABCモデル」参照:Components of Attitude: ABC Model (simplypsychology.org)
2.外集団は脅威
グループ化(分類化)すると、内集団と外集団ができます。
内集団とは、自分と同類とみなす人々のことです。
外集団とは、自分と異なるとみなす人々のことです。
自分が属するグループのメンバーには親近感や好意を抱き、そのグループを他集団よりも高く評価する傾向のことです。
これは、自尊感情(自分の存在価値の評価)を高める必要性によるものです。
これだけなら、外集団を攻撃(排除)する必要はありません。
ところが、集団間においてしばしば抗争が起こります。
その理由は、これにより説明されます
↓↓
人間の行動の多くは、死に対する恐怖を軽減することに無意識的に動機づけられているとする理論です。
例えば「文化」のように、世界観を共有する人々(内集団)とは「秩序」「意味」「永続性」を創ることができます。
その中では安全が保障され、価値観の基準もあり、文化的な価値を全うする人は死を超越すると信じることもできます。
こういった「自分の存在が承認されている安心感」が、死の恐怖の緩衝材になりうるわけです。
反対に、自分の世界観の公正さを確信できない集団(外集団)の中にいると、自分の存在価値を認めるはずの「自尊感情」が脅かされ、自分の存在に対する不安(死の脅威)が増すことになります。
結果的に、他集団を排除したくなるというわけです。
特に、宗教は死とダイレクトに関わります。
宗教的信念の相違は、脅威排除=外集団排除を強く動機づけるのでしょう。
引用:
【内集団バイアス】特徴や具体例、克服法をわかりやすく解説 - ふむふむ心理学 (hatenablog.com)
自尊心(自尊感情)と行動への影響 (esdiscovery.jp)
3.非人間化/悪魔化
歴史の中では、様々なグループが迫害の対象とされてきました。
(ユダヤ人、ジプシー、ホモセクシュアル、黒人…など)
迫害者が、良心の呵責、恥、罪の意識などを感じることなく行動できる心理背景には、対象の非人間化/悪魔化があるといいます。
つまり、対象を「人間」ではなく「悪魔」「害獣」など「退治しなければいけないもの」とみなすことで、いわば正義という大義名分のもと行動します。
冷たくて、能力が高い
ある研究により、「妬みによる偏見」の条件が明らかになりました。
その条件とは、cold-competentです。
cold=性悪で不誠実、信用できない
competent=知識や技術力が高く、成功している
情勢が安定している時は、ユダヤ人の能力の高さをリスペクトして有益に利用します。
しかし、経済的/政治的に不安定になると、矛先を一気に向けます。
その理由は、これにより説明されます
↓↓
限りある資源や財物を前にした時に、他集団を妬んだり、敵視することです。
第二次大戦中のユダヤ人迫害は、まさにこれが原因だったそうです。
引用:偏見・差別・ステレオタイプの心理学的な説明 (esdiscovery.jp)
SUMMARIZE まとめ
ユダヤ人に対するネガティブ感情が古くから語り継がれ、刷り込まれてきました。
その”おかげで”、世界情勢が悪化する時には「スケープゴート」として人々の怒りや不安をぶつける「的」にされてきました。
根底にある、人間心理の防御的機能が作用しています。
また、ユダヤ人の特徴である、少数民族のアウトサイダー(外集団)で能力が高いことなど的にされる条件が揃っていることが、長く続く迫害の原因となっています。
REFERENCE 参考ウェブサイト
The Psychology of Modern Antisemitism: Theory, Research, and Methodology (degruyter.com)
Opinion | The Psychology of Anti-Semitism - The New York Times (nytimes.com)
Collective Psychological Processes in Anti-Semitism | Jerusalem Center For Public Affairs (jcpa.org)
The Evolutionary Psychology of Anti-Semitism | Psychology Today
映画好き心理カウンセラー
でも今回は、映画の内容より調査報告が多め
やまなか たかえ
摂食障害・依存症・神経症…他克服して心理カウンセラーとして活動中